身近な野菜を用いた分子系統樹を描く生徒実習教材の開発

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タイトル別名
  • Development of Vegetable-Based Methods for Learning Knowledge Related to the Molecular Phylogenetic Tree in a Japanese Upper Secondary School Biology Course
  • ミジカ ナ ヤサイ オ モチイタ ブンシ ケイトウジュ オ エガク セイト ジッシュウ キョウザイ ノ カイハツ

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抄録

2012 年度から先行実施されている高等学校理科の新学習指導要領に基づく生物教育では, 新科目「生物」(4 単位)において, 「DNA の塩基配列などを比較することによって系統関係が調べられていることを取り上げることが考えられる」(文部科学省, 2009)とあるように, 分子進化を基盤とした系統樹(分子系統樹)の内容が前面に出てくる。そこで本研究は, 生徒にとって身近で関心も高いと思われる「野菜」を題材にして, 「野菜の可食部や花の形は系統を反映している」を仮説とし, rbcL 遺伝子産物のアミノ酸配列を用いて分子系統樹を描くことにより, この仮説を検証する生徒実習教材を開発することを目的とした。生徒自らが分子系統樹を描くことにより, 分子進化, 分子系統樹, 分子時計など, 新学習指導要領で要求される知識を効率よく学習できると期待できる。<br>生物選択の高校生を対象に, フリーソフトMEGA 4.0 を用いて, NCBI から各種野菜のrbcL 遺伝子産物のアミノ酸配列をダウンロードし, 分子系統樹を描き, 同時に各野菜の分類体系を調べる授業実践を行った。その結果, すべての班で期待される分子系統樹を描くことができ, また実習前後質問紙調査の結果から, 上記仮説は棄却され, 「野菜の花の形は系統を反映しているが, 可食部の形は系統を反映していない」ことに生徒が気付くことができたこと, さらに分子進化, 分子時計, 分類等の基礎知識に関して一定の教育効果があることが示唆された。<br>今後は, MEGA の英語表記やPC 操作の煩雑さを改善し, セントラルドグマ教材や進化教材との併用効果等についても検討を行いながら改良していくことで, 新学習指導要領の理念に根差した更なる効果的な生物教材, さらには植物の進化を学習するための有効な生物教材として発展することが期待される。

収録刊行物

  • 理科教育学研究

    理科教育学研究 54 (3), 319-334, 2014

    一般社団法人 日本理科教育学会

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