日本の学校における喫煙防止教育の評価に関する研究の現状と課題

書誌事項

タイトル別名
  • CRITICAL EVALUATION OF SCHOOL-BASED ANTI-SMOKING EDUCATION IN JAPAN
  • ニホン ノ ガッコウ ニ オケル キツエン ボウシ キョウイク ノ ヒョウカ ニ カンスル ケンキュウ ノ ゲンジョウ ト カダイ

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説明

目的 日本における過去25年間の喫煙防止教育に関する研究を,その評価が適切に行われているかどうかという視点から考察した。<br/>方法 「喫煙防止」および「禁煙教育」をキーワードとして検索した論文の中から,児童および生徒を対象として,実際に喫煙防止教育や指導が行われた研究を対象とした。まず,研究デザインを評価するにあたって,「定期健康診断に関するカナダ研究班」による「証拠の質」における 5 つの類型を参考に,「準実験的研究法」と言えるための 3 項目(対照群設定の有無,教育群および対照群に対する事前調査と事後調査の実施の有無)について各論文を調べた。他に,各調査の回収状況,個人別観察の有無,評価対象群,前後比較等の比較方法,評価の観点について調べた。<br/>結果 対象論文27編のうち,対照群を設定しているものは全体の約40%であり,全体の30%で事前調査が実施されていなかった。事後調査の内,教育後 2 週間以内に実施した直後調査のみのものが10編,一定期間後の追跡調査のみのものが 5 編,両調査を行ったものが10編の外,成人期まで追跡したものが 5 編あった。全体の30%にあたる 8 編が準実験的研究であり,これらはすべて「証拠の質」におけるII-1 に該当していた。研究評価のほとんどが群間比較で,個人変容をみているものは 1 編であった。<br/>結論 研究デザインに関しては,全体の 4 分の 3 において何らかの問題があった。対照群の設定場所は,校内と校外がほぼ半々であったが,可能ならば校内外に設定することが望まれる。事前調査は不可欠であり,事後調査は可能ならば対象者が成人に達するまでの追跡調査が望ましい。そのための個人同定や追跡のための情報把握の工夫が求められる。解析にあたっては,変容の指標を明確にするとともに解析対象を吟味し,セレクションバイアスへの配慮を怠るべきではない。健康教育の評価方法の質を改善していくためにも,疫学的研究法に関する理解の徹底が重要である。

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被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (29)*注記

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