単純無作為抽出法を用いた高齢者インフルエンザ予防接種の費用・接種率の調査およびその研究デザインの有用性

  • 星 淑玲
    筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻
  • 近藤 正英
    筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻保健医療政策学分野
  • 大久保 一郎
    筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻保健医療政策学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Study on pricing and uptake rate of influenza vaccination for the elderly in Japan with a simple random sampling method
  • タンジュン ムサクイ チュウシュツホウ オ モチイタ コウレイシャ インフルエンザ ヨボウ セッシュ ノ ヒヨウ セッシュリツ ノ チョウサ オヨビ ソノ ケンキュウ デザイン ノ ユウヨウセイ

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説明

目的 2001年に市区町村による高齢者インフルエンザ予防接種が開始された。公的施策の評価に際しては,財源,利用率などの動向を迅速に把握することが有用である。本予防接種に関しては厚生労働省が市区町村を対象とした悉皆調査法によって接種率等の把握を行ってきているが,本研究では簡便な標本調査法を用いて,全国の費用負担および接種率の平均値の年次推移を明らかにし,かつ,標本調査法の有用性を検討した。<br/>方法 居住高齢者数が記載された市区町村表が入手できることを利用し,全国の22,671,944人の高齢者から単純無作為抽出法によって300標本を抽出した。同一市区町村の居住者が接種を受ける際に伴う費用が同額であることと,市区町村別の接種率は当該市区町村に居住する個人の接種確率とみなせることを利用し,居住市区町村当局を対象に費用負担と接種率に関する調査票を郵送法によって実施した。統計分析は分散分析および回帰分析を用いた。<br/>結果 回収率は94.0%であった。1 人当たりの費用の全国平均値の推移(2001-2005年度)は,個人負担額が1,134円,1,136円,1,139円,1,129円,1,148円;公的負担額が2,972円,2,955円,2,966円,2,954円,2,941円;全体費用が4,194円,4,169円,4,178円,4,156円,4,142円であった。各費用の年次推移に有意差は認められなかった。接種率の全国値の推移(2001-2004年度)は29.9%,37.8%,46.1%,49.6%で有意な上昇が認められた。<br/>結論 接種開始以来 5 年を過ぎた高齢者インフルエンザ予防接種の個人負担額,公的負担額,全体費用(個人負担額と公的負担額の合計)の全国平均値は本研究によって始めて推定された。いずれの費用項目の全国平均値の年次推移にも有意な変化がなかった。また,悉皆調査によって公表された接種率と比較した結果,本研究で考案した単純無作為標本調査法は有用であることが示された。

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参考文献 (27)*注記

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