パニック障害患者における認知行動療法実施に伴う日中の唾液中コルチゾール分泌の変化

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in Diurnal Salivary Cortisol Secretion following Cognitive-Behavioral Therapy in Patients with Panic Disorder
  • パニック ショウガイ カンジャ ニ オケル ニンチ コウドウ リョウホウ ジッシ ニ トモナウ ニッチュウ ノ ダエキ チュウ コルチゾール ブンピ ノ ヘンカ

この論文をさがす

抄録

近年、唾液中コルチゾールが非侵襲的かつ簡便に用いることができるストレス指標として注目されている。本研究ではパニック障害患者を対象とし、認知行動療法(cognitive-behavioral therapy: CBT)プログラム実施に伴う唾液中コルチゾール分泌の変化を検討した。対象は9名の広場恐怖を伴うパニック障害患者であり、6回のセッションからなるCBTプログラムを実施した。プログラムの導入前と終了後に、質問紙・面接によってパニック障害重症度、回避行動、不安、抑うつ症状、一般性セルフ・エフィカシーを評価した。また導入前と終了後に唾液採取日を設け、一日6回(起床直後、15分後、30分後、3時間後、8時間後、就寝前)の唾液採取を実施した。得られたコルチゾール値から、傾き(直後から就寝前の値を減じたもの)、起床時反応(直後から15分・30分にかけてのコルチゾール反応の総面積)、一日分泌量(直後から8時間後までのコルチゾール分泌の総面積)を算出し、指標とした。分析の結果、プログラム終了後にパニック障害重症度、回避行動、一般性セルフ・エフィカシーが改善するとともに、コルチゾールの傾きが有意に上昇した(t[7]=2.51, p<0.05)。またプログラム前後の変化値をとり、スピアマンの相関分析を行ったところ、パニック障害重症度と一日分泌量(rs=0.71, p<.05)、状態不安と一日分泌量(rs=0.78, p<0.05)、状態不安と起床時反応(rs=0.81, p<0.05)の間に有意な相関が認められ、重症度や不安の低下とともに一日分泌量や起床時反応が低下することが示された。これらの結果はCBTプログラムの効果が生理学的にも簡便に評価できる可能性を示している。唾液中コルチゾールを用いた研究は今後さらに増えると予想され、臨床的な場面でも、生理的評価の手法として、このような指標が積極的に使われることが望まれる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ