東アジアの発展と揺れる日本の対外発展政策

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タイトル別名
  • East Asian Development and Japan’s Vacillating Foreign Development Policy between East Asia and Pacific Asia
  • ヒガシアジア ノ ハッテン ト ユレル ニホン ノ タイガイ ハッテン セイサク

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説明

東アジアの経済発展は、日本の戦後復興から1960年代の高度経済成長によって先導された。日本の発展は戦後復興以降、製品の対米輸出が重要な役割を果たしたが、1960年代後半以降はNIES、ASEAN、中国などの東アジア諸国の発展が日本と同様の貿易構造の下で続いた。もっとも内需の役割の大きい日本の発展とそれに続く輸出主導型の他の東アジア諸国の発展とは、そのモデルにおいて質的な違いを確認する必要があるが、ともに主要な市場をアメリカに求めた点で共通点がある。そして、日本に続く東アジア諸国の発展は、岡本-東アジア諸国-アメリカ(先進国)のトライアングル構造の下で実現した。だが、この伝統的なトライアングル構造を通じた発展も、1990年代初めには新しい構造に転換を始める。「アジア化するアジア」(渡辺利夫)として説かれたそれである。すなわち、域内貿易の進展とそれに伴う東アジアの自律性論の展闘である。それは、アジア太平洋発展メカニズムまたは経済圏から自律的な東アジア発展メカニズムまたは経済圏への転換と要約できるだろう。もっともこの2つの発展メカニズムは、単純に前者から後者への移行とは言えない。東アジアに関わる2つの発展メカニズム・経済圏観は現時点では、東アジアの発展の在り方に関するパワーバランスの移動の問題を引き起こし、伝統的なトライアングル構造の構成主体に複雑な影響を与えている。とりわけアメリカ、日本にあっては将来に向けた戦略的課題の焦点である。日本は過去10年ほどの間に、この発展メカニズムの変化にどう対処し、また現在、どう対処しようとしているのか。本報告では、東アジアの発展に伴うメカニズムの変化と、そこにおける日本の位置の変化を概観するとともに、日本の東アジア協力やFTA政策に点を当てて、2つの発展メカニズムあるいは経樹園観の聞で掘れる日本の課題を考察したい。TPP問題に揺れる日本は以上のような視点で捉えるとき、より深い考察が可能となるに違いない。

収録刊行物

  • アジア研究

    アジア研究 57 (3), 25-40, 2011

    一般財団法人 アジア政経学会

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