厚生連医療材料全国共同購入委員会人工透析専門部会における5ケ年の取り組み

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抄録

【要旨】  医療経営を取り巻く環境は、厳しさを増している。医療費抑制政策の一層の進行と、DPC対象病院が拡大される中で、従来の「出来高払い」から「包括払い」が一層進みつつある。そうした中で、厚生連病院の「医療の質の向上」と「経済的メリットの実現」・「情報交換と技術の交流」を目的として、医療材料全国共同購入委員会のもと専門部会として平成14年3月に設立され、現在に至る。この5ヵ年における取組みと到達点について報告する。 【対象及び方法】  対象とした医療材料全国共同購入委員会の会員厚生連及び病院の実態は、平成19年3月末現在17厚生連72病院だが、透析施設を有する病院は50病院、慢性維持透析患者総数3,600名である。協同組合としての厚生連組織の特徴を生かし、人工透析関連医療材料の共同購入を開始するに当たって、人工透析専門部会を設立した。専門部会の構成メンバーは、各厚生連から選出された臨床工学技士が部員となっている。運営は部会長を1名、副部会長3名とし、必要により部員以外に各施設より協力員が参加できることとしている。専門部会の開催は日本文化厚生農業協同組合連合会(以下文化連)を事務局とし概ね年間2回とし、人工透析に関連した実践事例報告や各種勉強会・施設見学の開催、人工透析関連同種材料の全国的な使用実態分析と比較検討・採用品目の統一、人工透析施設及び臨床工学技士関連実態調査等を実施してきた。共同購入対象材料は、ダイアライザー、血液回路をはじめとし、透析用留置針、透析キット、透析関連薬剤等も含め透析部門トータルでの収益改善を目指している。価格交渉形態は、独占禁止法の再販売価格維持行為に該当しない形態で、メーカー本社と事務局が直接に交渉する仕組みとした。  また多施設共同研究として平成16年9月から18年8月までの透析データを基に臨床効果の考察も行い、学会発表も実施している。 【結果】 1.5ヵ年間での経済メリットとして、加重平均で、ダイアライザーで35%、血液回路で30%、透析用留置針の主力製品で40%の経費削減を実現した。 2.同種品の比較検討による採用品目統一化が図られ、経済効果を実現した。 3.人工腎臓透析用粉末製剤の採用が進み、省力、省スペース化と経費削減に貢献した。 4. 厚生連間の人工透析多施設(25病院でn数440)共同研究が開始され、共同購入による経済効果と同時に臨床的にも良い効果が発揮されていることが考察できた。 【まとめ】 1.人工透析専門部会は各県連単位での臨床工学技士の責任者会議の開催や事務局参加による協議の場の設定を促進し、定期的な情報の共有に有効な役割を果たしている。 2.協同組合組織として共同活動の連携が図られ、全国的な方針に基づく製品の銘柄切り替えの実践が行われた。 3.厚生連グループとして透析治療に関し、多施設で共同研究が実施され、データから透析部会の活動は厚生連透析分野の臨床効果と経済効果に寄与していることが考察できた。 5.今後も、より一層の情報共有化と技術の交流を進め「専門知識の協同の力」で、人工透析専門部会を質量ともに発展させ、医療経営と臨床効果に貢献することが期待される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680493930112
  • NII論文ID
    130006943793
  • DOI
    10.14879/nnigss.56.0.150.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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