99歳てんかん発作を契機に糖尿病、髄膜腫、肺炎、尿路感染症が明らかになった症例

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抄録

症例は99歳女性。高血圧症、脂質異常症、慢性心不全で近医通院中。糖尿病を指摘されたことはない。食事中に左上肢を中心とする間欠的な痙攣と意識障害が出現し頻度、持続時間の延長、症状の増悪を認め近医を受診。虚血性脳疾患が疑われたため脳神経外科紹介となる。頭部MRIにて髄膜腫を認め精査加療目的に入院。入院後もてんかん重積発作が継続する為ゾニサミドが開始となる。入院翌日血糖値1114mg/dlを認めインスリン開始後当院に転院となる。入院時傾眠傾向、発熱、脱水、高血糖、電解質異常、貧血を認めた。入院後の画像及び血液、尿、髄液検査より発熱の原因は肺炎、尿路感染症によるものと考えられた。<BR> 症例は99歳と高齢であるが若い頃より口数が少なく、明らかな認知症は認めていなかった。通常はベッドにいることが多いが、食事は居間で家族ととり、日中はトイレ歩行もしていた。今まで糖尿病は指摘されたことなく1年前の尿検査でも尿糖はマイナスであった。<BR> 高齢者は一般に自覚・他覚症状に乏しく症状が進行してから病気に気づかれることが多い。症例は痙攣発作で入院時血糖1118mg/dl、CRP17mg/dlと高血糖、高炎症反応を認めるも、入院までは通常どうり食事摂取しており、入院後も37度台の微熱程度であった。てんかん発作がなければ症状がさらに増悪するまで気づかれなかった可能性が高い。<BR> 成人のてんかんの病因は、青年期あるいは小児期からのキャリーオーバーが考えられる先天性のてんかんから、青年期に多い頭部外傷性や脳腫瘍、高齢期における脳血管性てんかんまで多岐にわたる。本症例は脳腫瘍を認めたが周囲の明らかな圧迫所見は認めずてんかんの直接的な原因の可能性は少ないと思われたが虚血の可能性は否定できない。高血糖、脱水、電解質異常もありこれらの代謝異常がてんかんの原因となっている可能性も否定できない。てんかん発作抑制において、てんかんの診断(発作型・症候群分類)は治療方針を立てるうえにも重要である。経過と若干の考察をふまえて報告する。

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  • CRID
    1390282680494034688
  • NII論文ID
    130006943929
  • DOI
    10.14879/nnigss.59.0.117.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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