緩和ケア病棟実習における学生の学び

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抄録

〈緒言〉看護および看護学教育において「死」について考える機会は大変重要である。看護学生においては、年齢的にも身近な「死」を経験していないことが多く講義のみでは実際のこととして捉えるには限界がある。また、一般病棟実習では、全員が終末期患者と関わることは少ない。当校では3年次の領域別実習の中で2日間緩和ケア病棟(以下PCUとする)の見学実習を行っている。この実習で学生がどのような学びをしているのかを明らかにしたので報告する。<BR> 〈方法〉<BR> _丸1_データ収集期間:2007.10~2007.12<BR> _丸2_データ収集方法<BR> 領域別実習の中で行っているPCUの見学実習終了後に、学生に説明し紙面により同意を得られた学生に、学びのレポートのコピーを提出してもらう。<BR> _丸3_分析方法<BR> レポートの記述内容について学んだことを抽出し、類似性からカテゴリ化した。<BR> 〈結果〉学生16名の学んだ内容のコードをデータ化した結果243を類似性から78のサブカテゴリ、14のカテゴリを分類し4つの内容にまとめた。<BR> <B>1.癒しの環境</B>では3つのカテゴリが抽出され 【一般病棟とは違い療養する家のようで病棟に温もりや四季を感じた】【音楽会やたくさんの行事は患者・家族にとって交流の場であり、楽しみや癒しとなる大切な場であると感じた】【患者・家族が生活しやすい構造でゆったりと落ち着いた時間を過ごせる生活の場と感じた】であった。<BR> <B>2.患者・家族の苦痛緩和への関わり</B>では3つのカテゴリが抽出され【患者の苦痛を観察しながら薬やケア方法により苦痛緩和を優先した関わりをしていると学んだ】【声かけやタッチングは不安で苦しい患者・家族にとって安心感を与える大切な精神面への援助だと学んだ】【入院中からグリーフケアにつながるよう家族の希望を取り入れ、家族が満足できるようなケアが重要だと学んだ】であった。 <B>3.患者・家族が生きがいを感じられるための工夫</B>では3つのカテゴリが抽出され【患者・家族の希望や人生観を尊重しながらその人らしく過ごせるような関わりが大切と学んだ】【患者の笑顔を見ることで暗いイメージが変化し死ではなく生を感じた】【患者・家族を含めた多職種が協力して身体・精神・社会面から患者・家族を支えていると学んだ】であった。<BR> <B>4.死生観や看護を考える機会</B>では5つのカテゴリが抽出され【自己の死別体験を含め生や死について考えることができた】【看護師の対応からコミュニケーションの基本や患者の基本的ニードを満たす患者中心の看護を再認識した】【チーム看護の大切さを再認識した】【看護師には状態変化を見極める観察力、専門的な知識・技術、患者の気持ちを理解することが大切だと思った】【患者・家族の望みに応え、余裕をもって患者に寄り添う看護の基本を忘れないように看護していきたい】であった。<BR> 〈考察〉実際にPCUに身を置きPCUの特徴である癒しを体感し、患者・家族の生活を目にしたことで、死を単に恐怖ではなく、生と関連付けて考えることができた。また、そこに関わる看護師の姿から患者が良い生を全うするために、看護師としてどのように患者や家族と関わるべきか、どう関わりたいかを考える機会になった。PCUの実習は看護観や死生観を考える実習になっていると言える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494054784
  • NII論文ID
    130006943951
  • DOI
    10.14879/nnigss.57.0.144.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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