新人看護師のインシデント要因

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<緒言> 新人看護師(以下、新人とする)は、慣れない職場環境に加え知識・技術も未熟であるためインシデントを起こすリスクが高い状況にある。私は今年プリセプターを行う中で新人がインシデントを起こしたとき、その辛さを共に実感してきた。  新人のインシデントを減少するため事例分析を行った結果、インシデントの背景にある要因が明らかとなったため報告する。 <方法> 1.調査期間 平成18年4月~9月 2.研究対象者 当病棟に勤務している平成18年度新人看護師4名 3.データ収集方法 調査期間内に当病棟で新人によって報告された当院共通のインシデントアクシデントレポート(以下インシデントレポート)から、内容・原因、発生月、勤務帯(平日、土日祝日の日勤・夜勤別)を抽出する。さらにインシデントとして一番多く報告されている注射・点滴について取り上げ、新人にその内容に関する「知識の有無」「経験の有無」「その時の業務量」「心理状態」「他の看護師との関わり・協力依頼」について半構成的インタビューを行った。<結果・考察> 調査期間中に当病棟で報告されたインシデントは合計49件であった。そのうち新人は19件であり、全体の約40%であった。新人が起こしたインシデントの発生月をみると、4月0件、5月1件、6月5件、7月5件、8月4件、9月4件となり、6月以降多く報告されていた。一番多かったのは、勤務帯別では、平日日勤12件、内容別では、注射・点滴が8件、原因別では観察不足が9件であった。  6月から急にインシデントの報告件数が増加したことは、新人がチームの一員として動き出す時期によるものと考えられる。勤務帯別で平日日勤帯の報告が多かったことについては、平日は検査や入院が多く、業務が慌しくなることによるものではないかと考えられた。内容別で注射・点滴に関するものが一番多く挙げられたことは、当病棟では扱う注射・点滴の数も多いうえ、内容も多種にわたること、また原因別で観察不足が多いことについては、検査やケアが多く、業務に追われる余裕の無さが関連していると考えられた。 インシデント内容で最も多かった注射・点滴について新人にインタビューを行ったところ、知識・経験の有無では専用の溶解液があることを知らなかったなど、業務量では業務が重なって多忙な時など、心理状態では焦りや緊張した時、任せられた仕事を一人で抱え込んでしまう時など、他の看護師との関係では相談や協力依頼ができないことなどがインシデントの要因となっていることが分かった。 これらには「相談が出来ない。」という新人の共通の思いが聴かれた。まだ優先順位の判断が出来ず、周囲のスタッフとも十分な関係作りが出来ていない新人にとって、「相談すること」はとても難しいことなのだと分かった。 このように、新人に直接インタビューをすることで生の声を聞くことができ、私達は新人の知識や経験不足のみを補うだけではインシデントは減少しないということがみえてきた。今回の研究から、インシデントの直接の要因として新人の心理状態が大きく関与していることが明らかとなった。新人がタイムリーに相談でき、先輩と良好なコミュニケーションを図ることができれば、インシデントは減少するのではないかと思われる。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494070912
  • NII Article ID
    130006943976
  • DOI
    10.14879/nnigss.56.0.22.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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