厚生連医療材料全国共同購入委員会人工透析専門部会における3か年の取り組みと到達点

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抄録

【要旨】 医療経営を取り巻く環境は、厳しさを増している。医療費抑制政策の一層の進行と、DPC対象病院が拡大される中で、従来の「出来高払い」から「包括払い」が一層進みつつある。そうした中で、厚生連病院の「医療の質の向上」と「経済的メリットの実現」・「情報交換と技術の交流」を目的として、医療材料全国共同購入委員会のもと専門部会として平成14年3月に設立され、現在に至るまでの3か年における取組みと到達点について報告する。<BR>【対象及び方法】 対象とした委員会の会員厚生連及び病院の実態は、平成17年3月末現在16厚生連1農協84病院だが、透析施設を有する病院は57病院、透析ベット数1,450床、慢性維持透析患者総数4,000名である。協同組合としての厚生連組織の特徴を生かし、人工透析関連医療材料の共同購入を開始するに当たって、人工透析専門部会を設立した。専門部会の構成は、各厚生連より臨床工学技士等透析に従事する職員1名の代表を選出していただき部員とした。また、必要により部員以外に各施設より協力員が参加できることとした。役員は部会長を1名、副部会長4名とし、日本文化厚生農業協同組合連合会(以下文化連)を事務局とした。専門部会の開催は、概ね年間2回とし、人工透析に関連した実践事例報告や各種勉強会・施設見学の開催、人工透析関連同種材料の全国的な使用実態分析と比較検討・採用品目の統一、人工透析施設及び臨床工学技士関連実態調査等を実施してきた。共同購入対象材料は、ダイアライザー、血液回路からスタートし、透析用留置針、透析キット、透析関連薬剤等に拡大し、透析部門トータルでの収益改善を目指した。価格交渉形態は、独占禁止法の再販売価格維持行為に該当しない形態で、メーカー本社と事務局が直接に交渉する仕組みとした。<BR>【結果】1.3か年間での経済メリットとして、加重平均で、ダイアライザーで30%、血液回路で30%、透析用留置針の主力製品で40%引き下がり、トータルで31%の経費削減を実現した。<BR>2.同種品の比較検討による採用品目統一化が図られ、経済効果を実現した。<BR>3.透析液用薬剤の「パウダー」化が進み、経費削減に貢献した。<BR>4.透析1回あたりの血液回路の鉗子使用本数の削減が進み、経費の削減と合わせて鉗子の洗浄、消毒の合理化が進んだ。<BR>【まとめ】1.専門部会設立を一つの契機として、各県連単位での臨床工学技士の責任者会議の 開催や事務局参加による協議の場の設定が進み、定期的に情報の共有が行なわれた。<BR>2.人工透析専門部会の設立による全国的な共同購買組織の設立と組織の強化が図られた。<BR>3.協同組合組織として共同活動の連携が図られ、全国的な方針に基づく製品の銘柄切り替えの実践が行なわれた。<BR>4.厚生連グループとして共同研究の検討が始まり、透析医療分野の医療の質的発展が期待される。<BR>5.より一層の情報共有化と技術の交流を進め「専門知識の協同の力」で、人工透析専門部会を質量ともに発展させ、医療経営への貢献が期待される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494427008
  • NII論文ID
    130006944344
  • DOI
    10.14879/nnigss.54.0.192.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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