一般廃棄物焼却施設による周辺環境ならびに住民健康への影響調査(1)

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  • -地表風と降下物による生活環境調査-

抄録

〈はじめに〉<BR> N町は相模湾に近く、「気候温和に、景勝に秀で、山の幸海の幸にも恵まれた不老長寿の里として(中略)、ここを終生の地として居を構えた人たちも多い」(N町郷土史)地域で、「湘南リビエラ」と呼ばれている。<BR> 調査対象となった団地は相模湾から北へおよそ2kmの位置にあり、標高100から150mの台地斜面の沢に立地している。居住者の多くは首都圏への通勤者で、居住年数は4から12年程度である。<BR> 団地上部斜面に同町の中規模の一般廃棄物焼却施設(固定式バッヂ炉・8時間操業)と小規模な管理型最終処分場がある。両施設とも廃棄物処理法に基づく規制基準は満たしているが、団地住民からは「悪臭がひどい」、「庭木や家が汚れる」などの苦情が絶えず、一部住民は人格権に基づき、同焼却施設の操業禁止を求める裁判を提訴している。<BR>〈調査とその方法〉<BR> 2002年10月、同団地の植物の状態、金属類の錆の状態、降下物に関する調査を実施し、粗大ばいじんの降下を確認。特異な植物の枯死や金属類の錆を観察した。<BR> 焼却施設周辺を200mのブロックに区切り、それぞれのブロック内の植物の葉を採取し、顕微鏡によってその種類を同定し、粒度(20μ以上)による分布図(個数)を作成した。その結果、本地域では同施設を中心に大量の降下煤塵が確認されきわめて劣悪な生活環境にあることが分かった。また、植物の異常の分布、金属類の錆に一定の傾向があることが推定された。<BR> これらの調査結果を元に、同団地自治会は住民の健康状態に関する「自覚症状調査」(アンケート法)を農村医学研究所に委託することを決めた。<BR> この調査の一環として、同施設操業状態と排出ガスの流れ(地表風の流れ)を検証した。<BR> 同施設の能力については、公表された施設図面と住民の観察記録、地表風は実測・地形解析とアンケートの生活環境に関する回答の分布から検討した。<BR>〈結果〉<BR>(1) 同焼却施設は大量のミスト、ばいじんが大量に排出される構造である。<BR>(2) 焼却施設からの排出ガスは、地形によってどんな風向の場合も団地内に流れ、団地下部の凹地にはガスが滞留する。<BR> 以上の点にかんがみ、同焼却施設が団地住民の生活や健康に強い影響を与える可能性があると断定した。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494489856
  • NII論文ID
    130006944441
  • DOI
    10.14879/nnigss.54.0.247.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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