離床センサーマット使用による転倒・転落予防の有効性

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抄録

〈緒言〉 現代社会は高齢社会であり、当病院も老年者の入院患者が増加している。入院患者は様々な機能障害と老化による骨や筋肉の萎縮などの特質を持っている。入院中の医療事故の中で転倒・転落事故の割合は高く、事故が疾患の回復の遅れやADLの低下を招き、患者の退院の延期にも結びつく。そのため看護者は入院患者の転倒・転落予防のためのリスクマネージメントを行い、有効な対策を考える必要がある。当院でも入院患者の転倒・転落を大きな問題と捉え、その対策として平成18年1月から離床センサーマット(以後センサーマットとする)を導入した。その結果、転倒・転落者数の減少につながったのでその有効性について報告する。<BR>〈調査方法〉<BR> 調査期間:センサーマット使用前後<BR> 使用前 平成17年8月1日から10月31日<BR> 使用後 平成18年1月1日から3月31日(平成17年11月から12月まではセンサーマットのデモを使用していたため調査から除外した)<BR> 調査内容:センサーマット使用前・後各3ヶ月間の転倒・転落者数の比較を行いセンサーマットの有効性について調査した。<BR>〈結果と考察〉 平成17年8月1日から10月31日までの3ヶ月間の平均入院者数は188.3名で転倒・転落者数は33名で転倒率は17.5%であった。当院でも転倒者の中には大腿骨頚部骨折や上腕骨骨折者も見られた。その対策としてセンサーマットを購入することとし、転倒・転落予防に取り組んだ。平成17年11・12月にセンサーマットのデモを使用し、ある程度効果があったので平成18年1月からセンサーマットを徐々に増加購入した。しかし担送・護送者は79%あり、ほとんどの患者にセンサーマットが必要となる。平成18年2月時点のアセスメントスコアを分析すると、入院患者総数193名中危険度III以上の患者は44名で、転倒・転落者数は3名であった。また認識力・運動機能障害・感覚機能障害からみると8点中7点以上の患者が49名あった。本来該当患者全てにセンサーマットを使用すべきだが、マンパワー対策可能な枚数を考慮に入れ、センサーマット購入枚数を20枚とし、センサーマット使用対象基準を認識力・運動機能障害ともある患者には原則的に、運動障害のある患者には優先的に使用することとした。センサーマット使用後は1月の平均入院患者数190.6名に対し転倒・転落者数は8名、2月は203.7名中3名、3月は198.5名中8名と減少した。センサーマット使用後の3ヶ月間の平均患者数は197.6名で転倒・転落者は19名で転倒・転落率は9.6%で、使用前に比べて7.9%減少した。センサーマット使用患者にも転倒者は4名あったが、センサーが鳴ると同時に訪室することで早期発見することができたため、大きなリスクに至らなかった。また患者一覧表にマット使用者を明示することにより訪室回数も増え、より転倒予防につながった。<BR>〈終わりに〉 今回の調査でセンサーマット使用前後の転倒・転落者数を比較することで、センサーマットの有効性が確かめられた。しかしセンサーマットを使用して3ヶ月しか経過していないため、マット使用による患者の負担や最適なセンサーマットの種類などを調査しておらず、今後さらに検討を加え転倒・転落の可能性のある患者のアセスメントを行い、安全に入院生活を送れるよう事故防止に取り組んでいきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494526720
  • NII論文ID
    130006944494
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.40.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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