人工呼吸器装着し、長期入院となっている患者様へのかかわり

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抄録

<はじめに>肺癌の手術は、1週間前後での退院が一般的な経過であるが、合併症等が起きると重症化し入院期間が長引くこともある。手術後、気管支断端瘻となり再手術、1年以上の人工呼吸器装着となっている患者様のウィニングに向けての看護を振り返り今後につなぎたいと考え、いままでの経過・看護の実際をまとめたので報告する。<BR><事例紹介>T氏、74歳、男性 右肺癌2004年1月16日入院、21日胸腔鏡下右下葉切除術、食事・歩行開始となったが呼吸状態悪化し26日気管切開20日胸部開窓術・腸瘻造設術となる。3月10日CO2ナルコーシスになり人工呼吸器装着、8月16日ウィニング開始、9月8日呼吸器を短時間はずせるようになる。10月17日車イス散歩が可能になる。<BR><看護の実践>無気肺・肺炎予防として観察、気管内吸引、体位交換、呼吸リハビリ、口腔内清潔保持を統一した手技で行なった。ウィニング計画は不安感を与えず、呼吸筋を疲労させないよう進めた。呼吸器の呼吸回数を昼夜で変更し自発呼吸時間を延長し、同時に昼間はラジオを流したり環境の改善に努め日常生活にリズムをつけた。血ガス値をみながら昼間は15分間酸素マスク使用から開始、8ヶ月後昼間マスクまたは人工呼吸器(CPAP)、夜間人工呼吸器(BIPAP・f4_から_8)で過ごせるようになった。床上リハビリ時はSaO2・呼吸状態・表情の観察に努め5m位歩行、手術後初めて院外車イス散歩ができた。T氏へは十分説明し表情を観察しながら接した。筆談・ジェスチャー・読唇等実施しニードの把握ができた。また発声が出来るようにカニューレ設定しT氏・家族に満足感を与えることが出来た。<BR><考察>人工呼吸器装着中の患者様には身体的・精神的ケアの提供が必要となる。身体的ケアとしてバイタル・呼吸パターンの変化・検査値チェックや“患者様がいつもとどこか違う”という看護師の気づきが大切であり、それがウィニングを進める時の異常の早期発見になる。また私たちは、呼吸器使用時の全身への影響を理解し、合併症予防の看護ケアを実施した。これにより呼吸状態の安定が得られ、医師・リハビリ部門との連携もあり離床が進められたと考える。精神的ケアを提供する上で念頭におかなければならないのは呼吸器装着中の患者様は“話すことが出来ない”ことである。T氏は意識鮮明で知的に問題なく、それゆえに会話が出来ないストレスは多大であると推測できる。コミュニケーション技術としてまず傾聴することが最も有効とされているがT氏の場合は困難な状況であった。始めのころは意思疎通が上手くいかなかったが非言語的コミュニケーションを計画し家族の理解・協力も得られ、日常生活の中で関わりを多く持つことで、安心感を与えることができた。それらが、信頼関係につながりウィニングを一緒に進められたと考える。<BR><まとめ>私たちの看護ケアが長期人工呼吸器装着となった患者様に与える影響は大きく、合併症予防を常に意識し身体・精神両面からていねいに関わっていく必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494698496
  • NII論文ID
    130006944554
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.330.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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