経済性を目指した施設関連系

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抄録

一般的に経済性は比較する対象がないと語れないが、今回「経済性を前提とした感染対策の工夫」という演題をいただき、メインテーマの「岐路に立つ地域医療?新たなる展開をめざして」の視点から、地域(どこまでが地域かという疑問は残るが)医療に関してなんらかの新たな工夫がないか考えてみたい。 <br> まず明らかなのは、感染対策が不十分で医療事故を起こした場合、計り知れない損失が病院と個人に発生することである。このため日頃から十分な感染対策をしなければいけないということについては、異論のないところであると思う。しかし、その万一起こしてしまった医療事故にかかわる経費について、賠償金や訴訟費用、これに携わる職員その他の人件費などを試算して、この金額より少なければ経済性が高いことになるのだろうか。 <br> 医療事故は毎年あるいは二、三年に一度発生することを前提とするのだろうか。又は、現在各施設で実施している、感染対策に係る費用を前提として、その経費より安価であれば経済性が高くなるのだろうか。この考えも、日頃から熱心に感染対策に取り組んでいる施設ではもともとの経費が高いため、なんらかの工夫で経費が下がれば高い経済性を示すようになる。しかし、日頃から下限すれすれの感染対策を実施している施設(たぶん全国で皆無だと信じているが)では経費が増大してしまうから、経済性が低いと判断できるのだろうか。疑問が残るところである。 <br> 感染対策はガイドラインに沿って各施設がマニュアルを制定している。手技レベルだけでなく、実際の実施レベルまで全国で統一できないだろうか。このことは各施設の独自性や特殊性から反論の来るところでもあると思われるが、それはスタンダード規格の上乗せ基準と考えて見てはどうであろうか。 <br> 例えば中心静脈カテーテルの挿入時にマキシマルバリアプリコーションが推奨されていることは周知の事実であるが、日本全国公立民間を問わず全ての病院で挿入時に使用される消耗品のキット化を、それぞれに専門的知識を持ったメーカーと医療側が協働することにより統一し、共同購入することができたとしたらそれこそ経済効果は計り知れないものがある。関係する物品、消耗品等のランニングコストは一度に大量の発注を行えることで、現状より安価になることが考えられ、業者の管理も容易となるため、必要なとき必要なだけ随時発注できると考えられる。なお、製品については同一規格であれば各病院の好みにより選択できるようにしておくようにすることにより、メーカー間の競争原理も働くと考えられる。どこの施設でも同規格の物を使用し手技が同じであれば、新任の医師も看護師も戸惑いは少なくなるであろう。実施している感染対策に不都合があれば情報を共有し、同様のトラブルを未然に防ぐことも可能となる。 <br> 感染対策が具体的に全国レベルで統一されるとなれば、教育は浸透し、情報が共有され、職員の意識も変革し、最大の経済効果である患者の安全が高まるといえないだろうか。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494713856
  • NII論文ID
    130004649239
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.34.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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