血液培養検査成績を迅速に報告するための模索

DOI

抄録

〈緒言〉血液培養検査は、最も迅速に対応すべき検査の一つである。そのため、ボトルを振盪培養し、肉眼による細菌増殖確認を待たずにケミカル的なサインを自動的に捉えようとする機器が普及し、当細菌検査室でも導入している。さらに、迅速同定感受性検査が可能なバイテック2(シスメックス)に、陽性となったボトルから直接菌液を調整することで多くの陽性検体は当日中に報告することが可能となった。それでも、培養を基礎としたシステムのため、血流感染症が疑われた場合、培養結果を待たずに経験的な治療が開始される。そこで、この抗菌薬処方に役立つ情報がコンピューター上から得られるのではなかろうかと検査成績を見直すこととした。   <BR>〈方法〉2007年4月~2008年3月の一年間に血液培養依頼された総数542検体、519事例(2セット同時提出された場合1事例として集計)、患者数313人中、培養陽性94事例(18.1%)、患者数80人について検討した。 また、カテーテル先端培養、尿培養、尿一般検査による膿尿等の検査成績も参考にした。<BR>〈結果〉血液培養依頼の82%が60歳以上の当院において、培養陽性患者の平均年齢は73.9歳、60歳以上の占める割合は87.5%、75歳以上の後期高齢者は62.5%であった。 在院日数と陽性事例の関係は、入院時の検体が陽性となった36事例、在院日数3日目までに40事例が陽性となり、内科系30事例、泌尿器6、外科系4の内訳であった。 在院日数1週間以上の陽性は54事例あり、内科系21事例、泌尿器16、外科系17と診療科の特徴を反映した成績であった。 在院日数と分離された細菌の関係では、在院日数3日以内では腸内細菌20株(ESBLsを2株含む)、ブドウ球菌13株(MRSAを1株を含むメチシリン耐性4株)であった。在院日数1週間以上で分離された細菌は、腸内細菌8株、ブドウ球菌33株(MRSAを12株含むメチシリン耐性24株)となり、院内環境に影響を受けた成績であった。 陽性が確認されるまでに費やされた培養時間は、翌日陽性63%、2日目までに83%が陽性となり、培養4日目までに全てが陽性となった。培養陽性までに3~4日費やした菌株は18株(16事例)あり、CNSが8株(4株はボトル1本のみ陽性)、MRSAが3株(1株は1本のみ陽性)、MSSAは2株とブドウ球菌が多数を占めていた。<BR> 〈考察〉高齢者は様々な基礎疾患を有して入院してくることが多く、また、地域の中核病院である当院には自宅以外から入院してくる場合もある。今回の集計において、高齢者は市中獲得型の血流感染を起こして入院してくる症例が多いと示唆された。分離された細菌や膿尿などの成績より、尿路より上行性に感染が進行した例が多いように思われる。しかし、感染臓器を推定して依頼される尿培養検査等は決して多くない。グラム染色では直ちに、培養でも翌朝にはコロニーを観察し、おおよその細菌名推定が可能である。その上で、血液培養ボトルの陽性が確認されれば、起因菌の推定はさらに迅速で容易となる。<BR> 〈結語〉血流感染症が疑われる場合には、第3セフェム系薬・カルバペネム系薬等の広域抗菌薬がEmpiricに処方されている。今回の集計では、陽性となった検体は全て培養4日目までで、多くは検出当日中に感受性成績まで報告可能である。さらに、患者背景より感染臓器と起因菌を推定することでDefinitiveな治療へとDe-escalationすることも可能で積極的な培養検査が役立つものと考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680494749056
  • NII論文ID
    130006944608
  • DOI
    10.14879/nnigss.57.0.266.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ