プレクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の1例
説明
(緒言)原発性アルドステロン症(PA)は稀な疾患とされてきたが、近年、高血圧患者の5-10%がPAとする報告が多い。副腎偶発腫瘍のうち、腫瘍からのコルチゾール自立性分泌を有するにも関わらず、クッシング症候群に特徴的な症候を欠如する病態を、プレクリニカルクッシング症候群(PreCS)と呼び、その頻度は副腎偶発腫瘍の約8-10%を占めるとされている。今回、われわれはPAとPreCSとの合併例を経験したので報告する。<BR>(症例)61歳、男性。主訴:腹痛。既往歴:大腸ポリープ、大腸憩室、前立腺癌(ホルモン療法中)。現病歴:50歳からの高血圧にて某医にて加療中。H19 腹痛を主訴に近医を受診し、腹部CTにて、左副腎腫大を認めたが、症状はなく経過観察されていた。徐々に腹痛が増強にて、H19/10 腹部CTが再検され、左副腎腫瘍は22mm大とやや増大傾向あり、H19/12 内分泌学的精査の目的に当科に紹介。入院時現症:BP 169/113mmHg,脈拍 90/m。明らかなクッシング徴候を認めなかった。検査所見にて、血清Kは3.3-3.4mEq/lと軽度低下。尿中アルドステロン濃度(6μg/日), 血漿アルドステロン濃度(PAC)は高値(86.2pg/ml), 血漿レニン活性(PRA)は0.1 ng/ml/hr以下、ARR 862と高値、立位フロセミド負荷試験では、PRAは120分値が1.0以下、カプトリル負荷試験では、PACは負荷後60分値が負荷前に比較し、20%以上の減少を認めなかった。血中および尿中カテコールアミンはいずれも正常範囲内。腹部エコーにて、10-12mmの左副腎腫瘍を認め、腹部CTにて、径22mmの左副腎腫瘍を認めた。以上にて、PAが疑われ、副腎静脈サンプリング検査など更なる精査が必要にて、筑波大学 代謝内科に転院となった。75gOGTTでは、境界型糖尿病も認めた。<BR>(経過および結果)副腎静脈サンプリング施行にて、左副腎から有意のアルドステロン高値を認めた。血清コルチゾールおよびACTHの日内変動は喪失しており、血清ACTHは抑制されていた。1mgおよび8mgのデキサメサゾン抑制試験でも、血清コルチゾールはそれぞれ0.1および0.3μg/dlと抑制を認めなかった。以上より、PreCSも合併のPAと診断された。現在、血清Kは3.9-5.1mEq/lと正常範囲内、血圧は降圧剤の服用にて、BP 136-91/79-63正常範囲を維持されており、また腹痛も認めていない。PAの薬物療法も手術に並んで有効である可能性があると報告もあり、本例においても、今後保存療法にて、慎重な経過観察となった。
収録刊行物
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- 日本農村医学会学術総会抄録集
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日本農村医学会学術総会抄録集 57 (0), 336-336, 2008
一般社団法人 日本農村医学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680494855552
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- NII論文ID
- 130006944697
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- ISSN
- 18801730
- 18801749
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可