「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」導入後2年間の効果と今後の課題

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抄録

〈はじめに〉平成18年の診療報酬改定で、「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」(以下、ケア加算とする)が新設され、当院は同年4月から算定を開始し2年が経過した。この2年間で褥瘡予防や治療計画への介入方法が変化し、院内褥瘡発生率の低下へとつながった。ケア加算導入後2年間の効果と今後の課題を報告する。<BR> 〈ケア加算の算定要件〉このケア加算は、褥瘡ケアを実施するための適切な知識・技術を有する専従の褥瘡管理者が、急性期入院医療において褥瘡予防・管理が難しく重点的な褥瘡ケアが必要な患者に対し、適切な褥瘡予防・治療のための予防治療計画に基づく総合的な褥瘡対策を継続して実施した場合、当該入院期間中1回に限り500点を算定することができる。この際、厚生労働省は褥瘡管理者を「皮膚・排泄ケア認定看護師」とすることを算定要件と定めている。<BR> 〈当院の褥瘡対策の現状〉当院は1,018床の総合病院であり、2名の皮膚・排泄ケア認定看護師が勤務しており、うち1名が平成18年4月から褥瘡管理者として専従で活動している。また、院内には褥瘡対策委員会があり、毎月の定例会議のほか、褥瘡管理者と共に週1回の褥瘡回診、患者ケアカンファレンス、定期的な院内勉強会の開催、体圧分散寝具の管理やさらなる充足にむけて活動をおこなっている。平成17年度に充足率49%であった体圧分散寝具はケア加算導入時に追加購入され、平成18年度は充足率91%まで向上した。<BR> 〈ケア加算導入の効果〉導入前は院内褥瘡発生率平均1.6%前後であったが、導入後の平成18年度は平均1.0%、平成19年度は1.1 %であった。また、平成19年度院内発生した患者の多くは_I_度と_II_度の軽度褥瘡であり、_III_度に悪化した症例は4%、_IV_度に及んだ症例は1%にとどまった。ケア加算導入後、褥瘡を発見した場合は、速やかに褥瘡管理者に報告することを義務付けている。また、必要に応じて褥瘡対策委員会と協働して治癒および再発予防に力を注いでいる。一方、院外発生褥瘡いわゆる持込み褥瘡の30%は_III_度・_IV_度の重度褥瘡であった。重度褥瘡の割合は院内発生と比較すると6倍に及んでいた。院外発生褥瘡の場合、適切に体圧分散寝具を使用していない症例が多かった。また、不適切な処置(感染褥瘡に台所用ラップを使用)を継続したことで感染が悪化し入院してきた症例も少なくなかった。このように院内褥瘡発生率は1.0%前後まで低下しているが、重度の院外発生褥瘡患者の入院が多く、褥瘡保有率は高い状況にある。ケア加算導入後の算定件数とそれに伴う金額に関しては平成18年度が1,925件9,625,000円、平成19年度は2,455件12,275,000円であった。<BR> 〈考察〉ケア加算導入後、院内褥瘡発生率が低下し重度褥瘡が減少した要因として、褥瘡管理者がハイリスク患者全員の褥瘡予防治療計画に介入し、速やかに適切なケア指導、局所処置を開始したことがあげられる。しかし、院内褥瘡発生率が低下しても、重度の院外発生褥瘡患者の入院が増加傾向にあり、ケアに従事するスタッフの労力が増加している状況にある。これらの要因として、周辺地域施設における体圧分散寝具の不備やマンパワー不足、正しい褥瘡予防に対する知識不足などが考えられる。今後は訪問看護ステーションや地域施設等と連携して院外発生褥瘡を減少させていくことが課題である。平成20年度は褥瘡対策委員会主催の勉強会を公開講座とし、地域にむけた勉強会開催を計画している。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680495059200
  • NII論文ID
    130006944836
  • DOI
    10.14879/nnigss.57.0.346.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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