ボーダーラインMRSA判定における検査法別検討

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<緒言>メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染対策上重要な菌として広く知られている。また治療面においてもMRSAであるか否かの検査結果は、治療薬剤の選択に重要な意味をもつため、判定は正確でなければならない。当院の臨床検体において検出されたCLSIガイドラインに基づいたMRSA判定基準であるoxacillin のMIC値(4μg/ml)前後の成績を示したボーダーライン上の黄色ブドウ球菌に対し、各薬剤に対する微量液体希釈法およびディスク拡散法、PBP2’産生性およびgold standardとされているPCR法によるmecA遺伝子検出法との比較を行い、検査法別によるMRSA判定成績について解析を行った。<BR><対象>2002年5月から2006年1月に各種臨床検体から分離された菌株を用い、MRSAスクリーニング培地であるMRSA1-A(日研生物)またはクロモアガーMRSA分離培地(関東化学)上に発育かつ陽性シグナルを示し、oxacillin MIC値≧4μg/mlの判定と乖離したStaphylococcus aureus 51株を対象とした。<br><方法>MIC法:MIC2000ドライプレート栄研(DPD2)耐性菌検出用を用いてoxacillin、cefoxitin(シグマ)、 ceftizoxime (アステラス製薬)等、抗菌薬のMIC値測定をCLSIに準拠した微量液体希釈法にて実施した。ディスク拡散法:CLSIに準拠したミューラーヒントンII(日本ベクトンディッキンソン)を用いoxacillin 、 cefoxitin 、ceftizoximeのセンシディスク(日本ベクトンディッキンソン)の阻止円径を測定した。PBP2’産生性:MRSA-LA「生研」(デンカ生研)およびウサギ抗血清を用いたウェスタンブロッティング法を用いて実施した。mecA遺伝子の検出:プライマー(5’-CTCAGGTACTGCTATACCACC-3’と5’-CACTTGGTATATCTTCACC-3’、Hedin et.al. 1993)PCR法を用いmecA遺伝子を検出した。PBP2’産生性の誘導:mecA遺伝子を保有しているにもかかわらずPBP2’産生性の発現がほとんど見られない菌株については、ampcillin の添加による発現量の変化を観察した。<BR><結果>検査法間での乖離例ではoxacillinのMIC値が≦0.25から2 μg/mlを示した株でmecA遺伝子陽性株は11株、4μg/mlを示した中では10株存在した。また、4μg/mlを示した中にはmecA遺伝子陰性株が2株存在した。mecA遺伝子保有株とMRSA-LA(PBP2’)試験陽性株は共に38株検出され、すべて同一菌株であった。ディスク拡散法(CLSI準拠法)ではoxacillinディスクをcefoxitinディスクに変えて耐性ブドウ球菌の推定検査を行う必要性があった。<BR><考察>ボーダーラインMRSAの薬剤感受性成績は、一見MSSAと誤判定しかねない感受性パターンを示す。しかし、β‐lactam剤によりPBP2’の産生性が増強されることから、どの検査法を選択した場合においても正確な判定を臨床にフィードバックしなければ治療を誤ることにつながりかねず、注意が必要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680495146496
  • NII論文ID
    130006944941
  • DOI
    10.14879/nnigss.55.0.150.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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