マムシ抗毒素血清を投与した小児マムシ咬傷の1例

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  • -当院マムシ咬傷30例の検討を加えて-

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説明

〈はじめに〉マムシは琉球列島を除く日本全土に分布して<BR> いる。マムシによる咬傷は都市部ではまれであるが,田畑<BR> や山中での被害報告が多く農村医療では重視される。年間<BR> 発生件数は約3,000件とされており,そのうち小児は5~<BR> 10%を占めると考えられている。ただし,崎尾らの重症度<BR> 分類でGrade3以上の小児重症例の報告は少なく,抗毒<BR> 素血清などの薬物療法に関してまとまった報告はない。<BR> 今回,我々はマムシ抗毒素血清を投与した小児マムシ咬<BR> 傷の1例を経験したため,当院過去5年間のマムシ咬傷30<BR> 例の検討を含め,文献的考察を加え報告する。<BR> 〈症例〉4歳男子。8月○日21時頃右足第一趾を咬まれ受<BR> 傷,22時当院受診。著明な右下腿から膝上までの腫脹を認<BR> め,Grade3~4であった。WBC13,600/μL,CPK242U<BR> /L。入院直後,右下肢全体に腫脹が増悪し,嘔吐したた<BR> め,Grade5と判断し受傷から3時間後,抗毒素血清を投<BR> 与した。第3病日に下肢腫脹は最大となり,その後改善し<BR> た。第11病日に自宅退院となった。<BR> 〈考察〉マムシ抗毒素血清が有効であった4歳の症例を経<BR> 験した。本邦の抗毒素血清を投与した小児マムシ咬傷につ<BR> いて,我々が検索した範囲内では自検例を含め13例しかな<BR> かった。抗毒素血清の使用に関しては,使用したいがアナ<BR> フィラキシーショックや血清病などの副作用のため使用の<BR> 判断に躊躇することがある。1990年鳥取地裁では,抗毒素<BR> 血清投与が遅れたため医師注意義務違反という判決がなさ<BR> れており,担当医には慎重な選択が求められる。当院では<BR> マムシ咬傷の明確な治療指針は決めておらず,入院の有<BR> 無・抗毒素血清投与の有無・採血の有無など担当医師の判<BR> 断に基づいた治療が行われていた。今後,院内マニュアル<BR> を整備し,症例の蓄積が必要と考えられた。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680495302912
  • NII論文ID
    130006945092
  • DOI
    10.14879/nnigss.58.0.108.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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