血液透析中に急性硬膜下血腫をきたした2例

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抄録

鈴鹿市内で人工透析可能で脳神経外科を診療科にもつ病 院は当院のみであるが,鈴鹿市内の透析病院だけでなく近 隣の透析病院から当科への紹介もみられるのが現状であ る。今回,我々は血液透析中に急性硬膜下血腫をきたした 2例を経験したので報告する。 2例とも外傷は軽微であるが,透析患者は血管が脆弱で あるため頭部を打撲した際に血管損傷を生じ,透析中に抗 凝固剤を使用するために出血が助長され,急性硬膜下血腫 をきたしたと考えられる。術中所見からも脳損傷を合併し ていなかったため,意識障害が徐々に出現し,血腫の増大 とともに症状が悪化している。脳損傷を伴わない急性硬膜 下血腫の場合,脳ヘルニアが完成する前であれば手術治療 で比較的良好な予後を期待できることから,診断の早さと 脳神経外科医との迅速な連携が不可欠であると考えられ る。 2例のうち1例は近隣市の病院からの紹介であったが, 同市内の2病院で受け入れを断られた後の紹介であったた め当院搬送時にはすでに脳ヘルニアの状態であり,手術後 も意識障害が残存した。意識障害遷延例では入院透析で栄 養管理が必要となり,維持透析患者はさまざまな代謝異 常,電解質異常,低栄養,免疫能低下などの病態が存在す るため,意識障害が長く続くと,その間に合併症をきたし 致命的となる事が多い。 また透析患者の場合,患者の出血傾向と血液透析に用い られる抗凝固薬の出血に対する影響により,術中の出血コ ントロールが困難であることから可能であれば,保存的治 療が望ましい。しかしながら,保存的治療に必要な抗脳浮 腫剤であるマンニトールやグリセオールが十分に使用でき ないというジレンマがある。除水量等の透析管理だけでな く,使用可能な薬剤や点滴の種類と量に関しても制約があ るため,手術の有無に関わらず腎臓内科医と緊密に協力す る事が必要であると思われる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680495570560
  • NII論文ID
    130006945403
  • DOI
    10.14879/nnigss.58.0.183.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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