易怒性・攻撃性のある認知症患者に対する「笑い」の効果

書誌事項

タイトル別名
  • ~2事例を通した関わりから~

説明

認知症患者の中には,家族や介護者に対する暴言や暴力<br> といった易怒性や攻撃性が顕著で,結果としてその要因に<br> より入院せざるを得ないケースも多々存在する。<br> 認知症患者を対象とした笑いやユーモアに対する先行研<br> 究では,情動安定と日常生活動作の拡大への効果があると<br> すでに報告されている。そこで,特に易怒性・攻撃性が顕<br> 著な2事例の認知症患者に五感に対する快のアプローチか<br> ら,情動の安定を図ることを目的として,【笑い微笑み体<br> 操】と【笑いに関するビデオ鑑賞】を試みた。データとし<br> て,期間前・中・後における周辺症状の有無,出現時の時<br> 間帯および状況などの比較検討とプログラム実施中の参加<br> 観察によって得た。<br> プログラム実施中は,易怒性,攻撃性は明らかな低下を<br> 示し,同時に穏やかな他者への興味や関心を引き出し,笑<br> いを共有しようとする表情や言動を互いに導くことが可能<br> となった。このことから,他者とのコミュニケーションを<br> 円滑にする効果も得られると考えられた。しかしながら,<br> プログラムが終了すると,再び易怒性・攻撃性や大声など<br> が開始前と同様な回数もしくは増加する結果となった。<br> 認知症患者に対する“笑い”を媒介にしたプログラム<br> は,情動や周辺症状などの改善を期待するものだけではな<br> く,副次的に他者への興味,親近感や連帯感,心地よさも<br> 生じさせ,結果として心理面や対人関係に影響を与えるこ<br> とが可能であると考えられた。これは,プログラム実施期<br> 間が終了後に開始前と同様な状況に陥ったことからも推測<br> される。しかし,対象患者2名に影響したものが,“笑い”<br> だけによるものであるとは断定出来ない。プログラムの中<br> で,スタッフが密に関わる時間を持つことが影響したの<br> か,もしくは少人数のグループでの関わりが影響したのか<br> など多角的な再検討と継続するための手立ての構築などの<br> 課題を得ることができた。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680495657472
  • NII論文ID
    130006945501
  • DOI
    10.14879/nnigss.58.0.21.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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