大臼歯の近心傾斜および萌出不全に対する効率的な咬合誘導

  • 吉村 剛
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科顎口腔頚部医科学講座小児歯科学研究室
  • 海原 康孝
    広島大学病院口腔健康発育歯科小児歯科
  • 林 文子
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科顎口腔頚部医科学講座小児歯科学研究室
  • 香西 克之
    広島大学大学院医歯薬学総合研究科顎口腔頚部医科学講座小児歯科学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • A Case Study of Effective Appliance toward Mesial Inclination and Ectopic Eruption of Molar Teeth

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説明

大臼歯の咬合誘導は,その歯根が複根であり,表面積も広いという解剖学的構造などにより,歯の移動には大きな力が必要となる。そのため,これまでに報告された大臼歯の治療法は,数歯にわたる固定源を必要とするものが多く,いずれの治療法も複雑であった。しかし,咬合誘導はできるだけ単純で容易であることが望ましい。そこで著者らは,パワーチェーンやセクショナルワイヤーなどを利用した装置により,咬合誘導を2 例行った。下顎第二乳臼歯の低位が原因で,下顎第一大臼歯が近心傾斜し,咬合不全を生じた症例に対しては,リンガルアーチとパワーチェーンから構成されるsimple molar controller を用いて治療した。下顎の萌出スペース不足が原因で,下顎両側第二大臼歯が近心傾斜し,萌出困難となった症例に対しては,クリンパブルフックとセクショナルワイヤーを用いて咬合誘導を行った。右側はエラスティックの弾性力を,左側はワイヤーの復元力を利用して治療した。これらの治療の結果,以下のことが明らかとなり,治療法の有効性が示された。1 .いずれの装置も構造が単純で,施術や調整が容易であるため,チェアータイムが短かった。2 .装置の装着期間は3~7 か月と比較的短く,装着期間中に患者が苦痛や違和感を訴えることはなかった。

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 47 (5), 780-786, 2009

    一般財団法人 日本小児歯科学会

参考文献 (17)*注記

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