鋳造ポストの除去方法に関する臨床的検討―従来型ポストコアリムーバーと改良型ポストコアリムーバーの比較―

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical Investigation of the Methods for Removing Cast Posts―Comparison of Standard and Improved Types of Post and Core Remover―
  • 岐阜県立多治見病院歯科口腔外科における舌癌の臨床統計的検討
  • ギフ ケンリツ タジミ ビョウイン シカ コウコウ ゲカ ニ オケル ゼツガン ノ リンショウ トウケイテキ ケントウ

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抄録

目的:鋳造ポストの除去処置は困難であり,除去後に歯根破折などの臨床トラブルが起こるケースが日常的に少なくない.このことから,患者に快適で安全・安心な歯科医療を提供するためにも,修復物除去の時間短縮(Speedy),除去の確実性(Sure),患者への最小限の侵襲および安全性(Safe)を考慮する必要があると考えられる(3S).そこで本研究では,より容易に3Sをクリアできる鋳造ポストの除去方法を探索する目的で,過去の基礎研究の結果を踏まえ,メタルコア(鋳造ポスト)の除去処置に関して,従来型のポストコアリムーバー(以下,PR, YDM)とその改良型を用いて臨床的な比較検討を行った.対象と方法:王喜歯科医院において,以下の条件で鋳造ポストを除去した患者35名の,除去歯39本を対象歯とした.鋳造ポストを従来型PRで除去した群をRC群,および改良型PR(従来型PRに把握力を緩衝調節できる板バネを一枚のみ付与した構造)で除去した群をRSC群と定義した.RC群およびRSC群両群とも,鋳造ポストの除去対象歯の唇(頬)側面と舌(口蓋)側面のコアの金属マージン部に,FGジェットカーバイドバー#1970(松風)を用いてポストに達する深さまで切れ込みを入れた.さらに二種類のPRの先端の嘴部をおのおのこの二カ所の切れ込みに適合させて,鋳造ポストの方向(歯の中心方向)へ少しずつPRの把握力を加えながら,ポストを脱離させ除去した.その際に,鋳造ポスト除去に要した時間および鋳造ポストの根管内におけるポスト部の長さ,ポスト除去処置前後の対象歯の状態を臨床的に比較評価した.結果:来院患者の鋳造ポスト除去は,上記のいずれかの方法でもすべてのケースにおいて5分以内に除去できた[RC群:18/18, RSC群:21/21(単位:本)].PRの種類別の鋳造ポストの除去時間の平均は,RC群が103±77秒,RSC群が99±69秒で,除去した鋳造ポストの根管内での平均の長さは,RC群5.9±1.8 mm, RSC群5.7±1.6mmであり,ともに両群間で有意差はなかった(Mann-Whitney U test, p≧0.05).また細いFGジェットカーバイドバー#1970を用いたことにより,除去時の歯質削減の侵襲を可及的に小さくできたと思われる.さらに鋳造ポスト除去時に二種類のPRを用いたことにより,除去歯の歯根破折,自発痛・打診痛の発現,歯周ポケットの形成,歯の動揺はほとんど生じなかった.とりわけ,除去処置前と除去処置から1カ月以上経過後の鋳造ポスト除去歯の状態を比較すると,対象歯の打診痛およびプロービング深さ,歯の動揺の症状が有意に安定していた(Wilcoxon signed rank test, p<0.05).結論:以上より二種類のPRは,ともに臨床的にも迅速・確実・安全(3S)に鋳造ポストを除去できる可能性が示唆された.さらに,改良型PRのほうが従来型PRに比較して,除去時間がわずかに短い傾向にあることが経験された.

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