整形外科手術における術前浣腸の必要性の検討

説明

はじめに 術前の浣腸施行目的には消化管浄化による感染防止、手術操作の円滑化、術後イレウス 防止がいわれている。その反面、循環動態の変動、腸穿孔などの危険性、体力の消耗、処置による患者の羞恥心や不快感を伴う。特に整形外科手術の場合、術中の便失禁が術中感染につながるリスクは高く、人工関節置換術の場合必要以上に処置を行っているところもある。消化管手術では洗腸を必要とする手術症例以外は浣腸を廃止している現状が報告されており、当病棟もルチーンとなっている術前排便処置を実施指示しない医師もある。 そこで、全身麻酔・脊椎麻酔下での整形外科手術において、術前グリセリン浣腸実施群と未実施群にて術中便失禁の有無、術後初回排便についての調査を行い、整形外科手術における消化管浄化処置のグリセリン浣腸の必要性について検討した。 方法  全身麻酔・脊椎麻酔下での整形外科手術を受けた患者のカルテより調査   _丸1_A群~D群の術中便失禁の有無   _丸2_A群~D群の術後の初回排便日 結果  術前グリセリン浣腸実施群、術前グリセリン浣腸未実施群において、術中の便失禁は共になく、術後イレウス症状はみられなかった。術後初回排便日にも差はみられなかった。 考察 整形外科手術の場合、術中の便失禁が術中感染につながるリスクは高く、術前の消化管浄化処置は必要であると実施してきた。塩田らは、「消化管および腹部以外の早期離床が可能な手術においては、前日の下剤内服や当日の浣腸処置をしないほうが便失禁は少なく、看護上の問題も少ない。」と述べている。今回全ての症例に対して術中の便失禁はみられなかったことから術前の消化管浄化処置は必ず必要とは考えられない。また術中感染の危険に対しても差はないと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680498866432
  • NII論文ID
    130006947216
  • DOI
    10.14879/nnigss.60.0.396.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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