手術が奏効したZenker憩室の一例

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抄録

【はじめに】Zenker憩室は咽頭食道移行部後壁の解剖学的脆弱部(Killian三角)から発生する圧出性憩室である。同疾患に対する手術治療例は、欧米では数多く報告されているが、本邦においては稀である。今回我々は、嚥下困難を呈したZenker憩室症例に対して手術を施行し、良好な結果を得たので報告する。【症例】88歳、女性。主訴は嚥下困難。特別養護老人ホームに入所中、介護者が嚥下困難に気付き、近医を受診した。CT検査にて上部食道の右後方に突出する憩室を認め、内部に食物残渣が多量に貯留していた。内視鏡検査では咽頭食道後壁に憩室を認め、内部に貯留した食物残渣の除去を試みられたが、困難であった。Zenker憩室内部に多量の食物残渣が貯留し食道を圧迫、嚥下困難症状が出現したと考えられた。QOL改善目的に、手術を施行することとした。【手術】全身麻酔下、右側胸鎖乳突筋前方に斜切開を加え、頚部食道にアプローチした。甲状腺右葉外側の剥離を進めていくと頚部食道右後方に、柔らかい腫瘤が認められた。さらに剥離を進めると、咽頭食道後壁から発生する約3cm大の憩室が同定された。憩室は咽頭収縮筋の尾側及び輪状咽頭筋の頭側から発生しており、Zenker憩室と診断した。輪状咽頭筋と食道筋層の一部を切開した。憩室頂部を切開し内腔側から確認しつつ、食道内腔狭窄を来さないよう十分注意し、自動縫合器を用いて憩室基部を切離した。【術後経過】術後経過は良好で、普通食全粥摂取後も嚥下困難症状の出現はなかった。術後九日目に退院となった。【まとめ】本疾患は無症状のことが多く、その場合は経過観察が一般的である。一方、高齢者の嚥下困難や誤嚥は頻度の高い症状であるが、原因が同定されないことも多い。本症例は、高齢者における嚥下困難症状の原因がZenker憩室であった、大変珍しいケースである。症状改善のために行った手術は、比較的低侵襲で極めて効果的であった。本疾患の診断と治療について、文献的考察を加え報告する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680499621376
  • NII論文ID
    130006947521
  • DOI
    10.14879/nnigss.60.0.233.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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