Wallenberg syndromeを呈した延髄梗塞患者の移動能力変化

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  • -sling exercise therapyの導入-

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【はじめに】今回,延髄梗塞によりWallenberg Syndrome(失調症状・前庭障害が主症状)を呈した症例に対し,移動(歩行・階段昇降)能力の向上を目標に理学療法を実施した.その後,更なる能力向上を目標に,発症5週間経過時よりsling exercise therapy(以下,SET)を用いた理学療法を導入した.当プログラム導入3週後の移動能力の変化について,考察を加え報告する.<BR> 【症例紹介】48歳,男性.<診断名>延髄梗塞(右椎骨動脈梗塞).<障害名>右半身運動失調症.<現病歴>2007年1月1日自宅にて発症,当院受診し,入院.<経過> 1月10日より理学療法開始.2月5日SET開始.<BR> 【方法】TERAPI MASTER(NORDISK TERAPI社製)を使用.両前足部をストラップに入れ,床から10cm程浮かせる.上肢はロープを把持.同一姿勢を20秒保持し,これを3セット行う.その後,左右交互に前後への下肢振り出しを10秒行う.<BR> 【評価】<BR> <初期>体幹・右上下肢失調症状:中等度.めまい・ふらつきあり体動時に増強.立位姿勢:頚部体幹右側屈.右片脚立位保持:不可.歩行(監視):歩行器,コルセット,右足部重錘負荷使用.階段昇降:めまいひどく不可.<BR> <SET開始時>体幹・右上下肢失調症状:軽度.めまい・ふらつきあり体動時に増強.立位姿勢:頚部体幹右側屈.右片脚立位保持:6秒.歩行(自立):T字杖,コルセット,右足部重錘負荷使用.階段昇降(監視):手すり使用.<BR> 【結果】失調症状の軽減および移動能力の向上を認めた.<BR> <SET開始直後>体幹・右上下肢失調症状:ほぼ消失.めまい・ふらつきなく体動時に軽度増強.立位姿勢:頚部体幹ほぼ正中位.右片脚立位保持:10.2秒.歩行(監視):free hand.階段昇降(監視):手すりなし.<BR> <SET開始3週目>体幹・右上下肢失調症状:ほぼ消失.めまい・ふらつきなく体動時に稀に出現.立位姿勢:頚部体幹ほぼ正中位.右片脚立位保持:16.6秒.歩行(自立):free hand.階段昇降(自立):手すりなし.<BR> 【考察】今回の結果が得られた要因としては,不安定な状況下でバランスをとる課題を与えたことで,前庭感覚に対してアプローチできたこと,骨盤周囲筋群の活動により体幹・骨盤部の安定性が得られたこと,下肢失調症状が抑制できたことなどが挙げられる.立位において,これらに対して同時にアプローチできたことが,著明な移動能力の向上に繋がったのではないかと考える.<BR> 【まとめ】SETのみによって今回の結果が得られたとは断定しがたいが,SET直後に著明な移動能力の向上を認めたため,報告した.定量的な失調症状評価法を導入しておく必要性を反省点とし,今後更にこのプログラムの有用性について検討していく予定である.

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  • CRID
    1390282680500088320
  • NII Article ID
    130006947805
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.26.0.36.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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