多遺伝子解析でアウトグループに位置した<I>Paracoccidioides brasiliensis</I> IFM 54648株について

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  • An atypical isolate of <I>Paracoccidioides brasiliensis</I> based on multiple gene analysis

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輸入真菌症の1つパラコクシジオイデス症(Pbと略)は中南米に限局する風土病で,危険度レベル3の Paracoccidioides brasiliensis を原因菌とし,我が国では,現在までに18例の報告がある.最近,本菌種に関しても多遺伝子解析に基づいた遺伝子分類がなされ,各種遺伝子情報が充実している.今回,当センターに保存されている臨床分離株(35株)についてrRNA (ITSおよびD1/D2),glucan synthase, chitin synthase,glyoxalase I mRNA, heat shock protein 70 mRNA, 43kDa糖蛋白抗原 (gp43),urease (Ure) 遺伝子の8種について配列を決定し,クラスター解析を行ったところ,ブラジルのパラナ州Pb患者の頸部腫瘤から分離された株(IFM 54648)の配列はいずれの遺伝子においてもアウトグループに位置した.とくに P. brasiliensis の同定に有用とされているgp43では90%以下の相同性で,2004年に発表したloop mediated isothermal amplication method (LAMP法)による同定のためのプライマーセットでは増幅しないことが判明した.一方,真菌の同定に広く使用されているrRNA遺伝子の相同性は99%以上であった.本株は温度依存性の二形性変換をし,最高発育温度は38℃,酵母様細胞は多極性出芽をし,教科書的記載に一致していたことから,形態・生理学的にも本菌種を否定する要素は見当たらない.一方,近縁種の Coccidioides spp.では各種遺伝子の相同性が99%以上であっても別種としているので,今後,この株のような配列を持つ株が多く発見されると,Paracoccidioides 属菌種の新種が記載される可能性があり,新たな遺伝子同定法開発も必要である.

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