半側空間無視に対するサイドミラーアプローチの即時効果

  • 渡辺 学
    北里研究所メディカルセンター病院 リハビリテーションセンター
  • 網本 和
    首都大学東京健康福祉学部
  • 大沢 涼子
    北里研究所メディカルセンター病院 リハビリテーションセンター
  • 新井 智之
    北里研究所メディカルセンター病院 リハビリテーションセンター
  • 桒原 慶太
    北里研究所メディカルセンター病院 リハビリテーションセンター

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【目的】従来、半側空間無視(USN)に対する治療介入の一つとして鏡が利用されてきた。その方法は対象者の正面に置いた鏡を見て姿勢をフィードバックさせるものであるが、かえって混乱を招き奏功しないことが多い。そこで我々は前回の本学会において、健側矢状面上に鏡を配置し鏡像を見ながら無視側の目標へのリーチ課題を行う(Side mirror approach:SMAp)ことで、USNの改善が得られた症例を紹介した。本研究ではさらに複数例に対してSMAp法を実施し、その効果を検証して臨床的有用性を明らかにすることを目的とした。<BR> 【対象】当院に入院し理学療法を施行した左USNを有する急性期脳血管障害患者11例(男性3例女性8例、平均年齢78.5歳)を対象とした。内訳は脳梗塞8例・脳出血3例、半盲あり8例であった。日本版行動性無視検査(BIT)は平均120.0点(15-197点)であった。対象者全員に本研究の内容を説明し参加の同意を得た。<BR> 【方法】介入方法:車椅子の右側に矢状面方向で姿勢鏡を隣接した。対象者の前方で鏡面から50cm離れた所にカラーボールを呈示し、対象者に鏡像を認識できるか確認してから実際のボールを掴むように教示した。掴むことができない場合はボールを10cmずつ鏡面に近づけて同様の教示を行い、実際に掴める位置まで繰り返した。掴めた時点で今度は10cm間隔で鏡面から離していき、再び掴めなくなる直前の位置でリーチ動作を10回行った。効果測定:線分二等分課題と線分抹消課題を用いた。測定時期は介入直前、介入直後、1週間後とした。統計学的分析はWilcoxon符号付き順位検定、Repeated ANOVAを用いた。なおSMAp介入後1週間は通常の神経学的アプローチのみ行った。<BR> 【結果】介入直後は線分二等分課題で有意な改善を認めた。左へ10mm以上変化した3例は全員大脳後方病変でBITが2桁であった。またそのうちの1例は複数行ったUSNへの治療介入のうちSMAp法のみに効果を示した。介入1週間後の成績は介入直前とほぼ同レベルに戻った(n=6)。<BR> 【考察】SMAp法は空間認知統合処理に関わる頭頂葉・側頭葉を主病変とする症例には効果が少なかったことから、イメージの脳内再現や全般的注意の障害には働きかけが小さいと考えられた。一方、後大脳動脈領域病変を主体とした症例には即時的なUSNの改善を認めた。注意を向けられない左視野内の目標を鏡像により認識して実物を掴むことで、左方向への注意の覚醒水準に影響を与え、注意の範囲が左方向へ代償的かつ一時的に拡大されUSNの改善につながったものと推察された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680500688768
  • NII Article ID
    130006948253
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.26.0.8.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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