肺アスペルギルス症の臨床と病理像

Description

肺アスペルギルス症(以下肺ア症)では、病態の解析・血清診断の進歩・新規抗真菌薬の登場により診断率の向上と臨床効果の改善が期待されているが、依然診断、治療はきわめて困難である。臨床では病態や種々の検査法、抗真菌薬の特性を理解し応用することが重要でありそれぞれについて概説する。侵襲性肺ア症(以下IPA)は悪性造血器疾患などの好中球減少時に多く認め、CTではmacro noduleやhalo signを呈し、病理学的に円形の凝固壊死、内部の菌糸の増殖像を認める(discrete nodule)。好中球数が回復した場合air-crescent signを呈し、好中球浸潤を伴った壊死巣のドレナージによる辺縁部の空洞に相当する。また、IPAでも非悪性造血器疾患や免疫抑制剤投与時は、画像的に細菌性肺炎に類似し、組織学的には好中球浸潤を伴う気管支肺炎様の病変を呈する(lobular consolidation)。同種造血幹細胞移植では好中球減少時より、GVHD予防でステロイド剤を用いる時期に頻度が増すことは注目に値する。また、Aspergillomaや慢性壊死性肺ア症(CNPA)などの慢性肺ア症は、診断は比較的容易だが、IPA同様、治療に難渋することが多い。組織学的には多彩な病理像を呈するが、広範な器質化肺炎像を伴うことがあり、好中球性の炎症に加え何らかreactiveな反応が病変形成に関与すると推測される。 抗真菌療法では新規抗真菌薬が登場しオプションが広がった。標的療法の第一選択薬はVRCZであるが、ITCZ注射剤、L-AMB, MCFGもAMPH-Bと同等の効果が期待できる。それぞれ副作用や併用薬の影響があり、特性を理解し選択しなければならない。難治例では併用療法も行われるが、まだエビデンスに乏しい。CNPAでは空洞内へのAMPH-Bの局所投与や、早期より外科治療が考慮される。経験的治療においては、実際診断が例えば接合菌感染のようにAMPH-B以外無効なケースもまれにあり注意を要する。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680500727296
  • NII Article ID
    130006948303
  • DOI
    10.11534/jsmm.51.0.30.0
  • ISSN
    09164804
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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