病原真菌のキャンディン耐性機構

  • NIIMI KYOKO
    Molecular Microbiology Laboratory, Department of Oral Sciences, School of Dentistry, University of Otago, Dunedin, New Zealand

Description

キャンディン(エキノキャンディン)は、真菌細胞壁の骨格多糖 β-1,3-グルカンの合成を特異的に阻害する新しいクラスの抗真菌剤である。標的分子は、細胞膜に存在する β-1,3-グルカン合成酵素で、これは UDPグルコースを基質としてグルカン鎖を伸長させる触媒サブユニット(FKS 遺伝子産物)とその機能を調節するサブユニット(RHO1 遺伝子産物)からなるタンパク複合体である。2001年に最初のキャンディン(カスポファンギン)が欧米で、2002年には我が国でミカファンギンが発売され、以来、Candida 症や Aspergillus 症の治療に用いられているが、我が国では現在まで耐性菌の出現は稀である。しかし欧米では、カスポファンギンに低感受性を示すCandida 属菌の分離が相次いで報告されており、今後薬剤の使用が広がるとともに耐性菌の分離も増え、キャンディンの奏効しない症例が増えることも考えられる。従って薬剤耐性機構の解明は欠かせない。キャンディンに耐性を示す臨床分離株では、FKS 遺伝子のエキノキャンディン耐性領域と呼ばれる部位にアミノ酸変異を有し、そのためキャンディンが標的分子に結合できなくなると考えられている。我が国で分離された C. albicans C. glabrata の耐性株にも、FKS 遺伝子の耐性領域にアミノ酸変異が認められた。著者らはこのアミノ酸変異と耐性との関連性を調べるため、感受性株を用いて部位特異的に変異導入を行い、それら変異が耐性獲得に寄与していることを証明した。一方、CryptococcusFusarium などの一次耐性菌では、標的分子であるグルカン合成酵素の発現が低い、FKS 遺伝子の耐性領域におけるアミノ酸配列が感受性菌種と異なるなどの報告がある。しかしこれらの理由だけで自然耐性をすべて説明することはできず、未知の薬剤耐性機構が存在する可能性があり、今後の研究が待たれる。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680501281920
  • NII Article ID
    130006948692
  • DOI
    10.11534/jsmm.52.0.28.0
  • ISSN
    09164804
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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