人工股関節全置換術前後における歩容変化

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  • 前額面での骨盤傾斜と上半身重心位置に着目して

抄録

【目的】<BR>当院人工関節・リウマチセンターにおいては年間約280症例の人工股関節全置換術(以下THA)が行われており、その全症例に理学療法士が術前より携わっている。患者の大半が術前に痛みと跛行を訴えにあげ、術後から退院に至るまでに、我々は多くの時間を跛行の改善に費やしている。しかし変形性股関節症患者の歩行分析を行う際に、臨床上では高価な工学的な機器を用いて分析を行う事は難しい。そこで歩行分析は視覚的観点より行なうことが重要となるが、観察的なものになる為、一つの評価として確立していくには熟練を要する。そこで我々は歩行分析を行う際の簡易的な指標を検討し、一昨年の同学会にて第一報を報告した。今回はTHA術前・術後における歩容の変化を同様の指標を用いて比較検討したのでここに報告する。<BR>【方法】<BR>対象は当院にてTHAを施行され、以下の条件を満たす症例に術前・術後で測定を行った。<BR>1.THAを片側のみ施行<BR>2.術後の脚長差が無い<BR>3.術後の測定は3週以上経過し荷重制限がない<BR>測定は上前腸骨棘と剣状突起にマーカーをつけ、デジタルビデオカメラにて前額面より静止立位・歩行を撮影した。左右の上前腸骨棘を結んだ線と床面がなす角を前額面上における骨盤傾斜角とし、静止立位・立脚中期にて記録し計測を行った。その後に静止立位と立脚中期の骨盤傾斜角を比較し、立脚側の反対側の骨盤が静止立位時に比べ挙上するものを挙上群、下制したものを下制群と分けて定義づけた。歩行分析の指標として、左右の上前腸骨棘を結んだ線の垂直二等分線(骨盤からの垂線)と、福井らの提唱する上半身重心との位置関係を検証し、術前後において変化を追った。なお本研究における角度・距離の計測はscion imageを用いて行った。また歩容と筋力(いわゆるパワー)との直接的な関連を検証する為に、THA術前・術後の股関節周囲の筋力をダニエルらの徒手筋力テスト(以下MMT)にて測定を行った。<BR>【結果・考察】<BR>・THA術前・術後ともに静止立位に比べて立脚期中期の骨盤傾斜は、挙上群・下制群ともに5°以内の角度変化であった。<BR>・THA術前では骨盤からの垂線と上半身重心の一致は認められなかったが、術後では一致が認められた。<BR>・股関節周囲筋の筋力は術前に比べて、術後では股関節の筋力の低下が見られた。<BR>本研究より歩行分析において、骨盤の位置変化のみを観察するだけではなく、骨盤の垂線と上半身重心との一致をみることにより、歩容の変化を捉える一指標になるのではないかと考えられた。また歩容の変化と筋力の回復との直接的な関係性は乏しいことが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680501707904
  • NII論文ID
    130006949252
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.25.0.2.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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