片麻痺下肢への分離促通集中運動療法の下肢随意性と筋力への効果について

書誌事項

タイトル別名
  • ―ABA型シングルケースデザインでの検討―

説明

【目的】<BR> 脳梗塞左片麻痺患者に対し、基本動作の反復や健側強化訓練などを入院時より継続して行い、これらに加えて、5種類の共同運動から分離した運動パターンを各々1日100回ずつ反復する麻痺側下肢への集中的運動療法を行い、ABA型シングルケースデザインを用いて検討し、考察した。<BR> 【方法】<BR> 70代男性、脳梗塞左片麻痺の症例である。発症から93日後から携わった。主な移動手段は車椅子にて移動しているが近位監視にて4点杖使用・装具装着にて訓練室まで移動可能である。運動機能としては、麻痺の程度はBrunnstrom recovery Stage上肢でII、手指I、下肢はIIIである。<BR>  シングルケーススタディのデザインは基礎水準測定期と操作導入期と第2基礎水準期に分けたABA型を採用した。基礎水準測定期は集中的運動療法を実施前までの期間をあて、操作導入期では集中的運動療法を加えた期間とし、第2基礎水準期は集中運動療法を除いた期間とした。当初ABAB型にする予定であったが患者退院のためABA型となってしまった。<BR> 治療開始前から、筋力に対し等尺性測定機器μTAS-MF01を用いて膝伸展筋力の経過を追い、下肢随意性に対してはBrunnstrom recovery Stageを用いて集中的運動療法導入前・導入後とで比較した。<BR> 治療方法は歩行訓練や立ち上がり動作などの運動療法に加えて共同運動から分離した運動パターンを5種類各1日100回ずつ反復する麻痺側下肢への集中運動療法を併用した。集中運動療法には分離した運動パターン以外に伸張反射やタッピング、姿勢反射を利用したが、特に講習会などに参加したことがない同一者が実施した。<BR> 【結果】<BR> Brunnstrom recovery Stageに変化は認められなかったが、膝伸展筋力は基礎水準測定期では、7.4(kgf)であったのが操作導入期では10.4(kgf)と改善がみられた。しかし第2基礎水準期では7.9(kgf)と低下した。<BR> 【考察】<BR> 今回の結果では集中運動療法の目的である神経路の形成と強化という効果は得られず、集中的な練習による一時的な効果しか得ることができなかった。今回の対象は、麻痺や神経症状の改善が緩やかになる発症から3ヶ月以上経過した症例であるが、治療介入早期の麻痺の改善には、脳浮腫や脳虚血の改善が関与している可能性がある。しかし、今回は先行して行われた基礎水準測定期よりも操作導入期において筋力において改善が認められた。特に、脳浮腫や脳虚血の関与が少ない集中運動療法期における改善が通常治療期よりも大きく、3ヶ月を経過した改善の余地が比較的少ないとされる患者でも集中運動療法は効果があったと考える。<BR> 【まとめ】<BR> 集中運動療法は患者様の意欲に左右される療法であり、リスクも高く慎重に行わないと過用となって逆効果となってしまうので注意が必要であると感じた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680502097024
  • NII論文ID
    130006949679
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.27.0.67.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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