自己免疫性甲状腺疾患ゲノム解析の現状と転写関連分子ZFAT

DOI
  • 白澤 専二
    福岡大学 先端分子医学研究センター 福岡大学 医学部細胞生物学
  • 中林 一彦
    福岡大学 医学部細胞生物学 国立成育医療センター研究所

抄録

自己免疫性甲状腺疾患(Autoimmune Thyroid Disease: AITD)は甲状腺機能亢進症であるバセドウ病と機能低下症である橋本病に代表される最も頻度の高い自己免疫疾患であり、他の自己免疫疾患と同様に複数の遺伝要因と複数の環境要因が相互に作用し発症する多因子疾患である。国際HapMap計画の進展とSNPタイピング技術の急速な進歩により可能となった全ゲノム関連解析法(GWAS)により、2006年以降、関節リウマチ、SLE, クローン病などの自己免疫疾患で同定された感受性遺伝子の数は急増しつつあるのに対し、AITDに関する新規に同定された感受性遺伝子の数はそれほど増えていない状況にある。ここでは、AITDの遺伝要因を、1)主要組織適合遺伝子複合体(HLA)領域、2)CTLA4, FCRL3等のHLA領域外の免疫関連遺伝子、および、3)TSHR等の甲状腺特異的遺伝子の三群に大別し、各群についての関連遺伝子探索の現状を紹介する。また、我々が理化学研究所と共同で行ったAITDのGWASの結果についても新たに紹介し、AITDの遺伝要因について考察を加える。<BR> 一方、AITD感受性候補遺伝子の一つとして、これまでに転写制御分子と考えられるZFATを報告してきたが、その後の分子細胞生物学解析から得られたZFATに関する免疫学的・細胞生物学的知見を紹介する。ZFATは魚類からヒトに至るまで高度に保存された遺伝子であり、胸腺、リンパ節、脾臓、末梢血のT細胞、B細胞に特異的に発現し、免疫応答遺伝子群の発現制御に関与すること、さらには、T細胞白血病細胞株の系等においてアポトーシスを制御する分子であることを明らかにした。さらに、ChIP-chip解析、DNA-蛋白結合解析等によりZFATの転写ネットワークの描出がなされつつあり、ZFATが制御すると推定される興味深い細胞・生命プログラムについても紹介する。

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680502125056
  • NII論文ID
    130006949712
  • DOI
    10.14906/jscisho.37.0.7.0
  • ISSN
    18803296
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ