組織幹細胞、ES細胞からiPS細胞へ:幹細胞研究の新しい展開と臨床応用への期待

説明

21世紀の新しい治療法として組織・臓器を置換する代わりに再生させる「再生医療」が注目されている。その成功の鍵を握るのが幹細胞である。<BR>幹細胞は種々の細胞に分化できる能力「多分化能」と多分化能を維持したまま増殖できる能力「自己複製能」を兼ね備えた細胞と定義され、その性質から組織幹細胞と多能性幹細胞とに大別される。組織幹細胞は造血幹細胞や神経幹細胞に代表されるように特定の組織・臓器中に存在する幹細胞で、限定された多分化能を持つ幹細胞である。一方で、ES細胞に代表される多能性幹細胞は個体を形成する全ての細胞に分化する能力を持っているだけでなく、比較的容易に試験管内で培養・維持・増殖することも可能であることから、組織・臓器再生の材料として、さらには薬物のスクリーニングや安全性試験など、医薬・創薬の材料として期待されている。しかし、ES細胞は受精後早期の胚からしか得られないため、患者自身の細胞を作ることができず、拒絶反応を回避することはできない。   これを解決する方法として、体細胞核移植(クローン)技術が確立され、患者の体細胞からES細胞を樹立することが理論的に可能になったが、技術的、倫理的ハードルは高く、現実的な手法にはなっていない。これに対し、最近、核移植することなく体細胞を初期化して多能性幹細胞(iPS細胞)を作り出す技術が開発され、これらの課題を回避しつつ患者由来の多能性幹細胞を作出することが可能になった。 本講演では急速に展開しつつある幹細胞研究の現状と、これらの成果・技術がもたらす新しい医療の可能性についてお話したい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680502369536
  • NII論文ID
    130006949894
  • DOI
    10.14906/jscisho.36.0.58.0
  • ISSN
    18803296
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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