Pusher現象を呈する患者における半側空間無視の有無が視覚的垂直認知と身体的垂直認知に及ぼす影響~2症例における検討~

  • 井上 真秀
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 藤野 雄次
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 網本 和
    首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
  • 大塚 由華利
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 播本 真美子
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 細谷 学史
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 小泉 裕一
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 篠崎 かおり
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 高石 真二郎
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター

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説明

【はじめに】<BR>Pusher症例における治療方法の選定には視覚的垂直認知(以下,SVV)と身体的垂直認知(以下,SPV)の評価が重要とされる.垂直軸認知は半側空間無視(以下,USN)によっても偏倚することが報告されているが,Pusher症例においてUSNの有無が垂直軸認知に及ぼす影響は十分明らかでない.今回我々は,Pusher症例におけるUSNの有無がSVVとSPVに及ぼす影響を2症例において検討した.<BR>【症例】<BR>症例①:Pusher例(以下,P例),71歳,男性,右手利き,診断名は脳梗塞(右前頭側頭葉,頭頂葉の一部).意識清明,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢Ⅲ手指Ⅲ下肢Ⅳ,感覚障害は軽度,Scale for Contraversive Pushing(以下,SCP)4.75点,Trunk Control Test (以下,TCT)12点であった.症例②:PusherにUSNを合併した例(以下,P+U例),74歳,女性,右手利き,診断名は脳出血(右視床,内包を含む被殻).意識清明,BRS上肢Ⅰ手指Ⅰ下肢Ⅲ,感覚障害とUSNは重度,SCP6点,TCT36点であった.<BR>【測定】<BR>患者を左右及び後面が板状のもので囲まれた座面に足底を接地させず座らせた.検者は座面を前額面で2°/秒の速さで回転させ,患者は垂直と認知した位置で合図をした.SVVは開眼条件,SPVは閉眼条件とし,開始位置は非麻痺側に20°傾斜した位置から行い,ABBA法で左右2回ずつSVV,SPVをそれぞれ計測した.真の垂直から非麻痺側への傾きをプラス,反対方向をマイナスとし,SVV,SPVそれぞれの平均値を傾斜方向性(恒常誤差),標準偏差値を動揺性(絶対誤差)として算出した.P例は第33病日,P+U例は第14病日に測定した.なお,測定に際して患者に内容と目的を十分説明し,同意を得た.<BR>【結果】<BR>P例における傾斜方向性はSVV,SPVの順に2.3°,1.5°であり,動揺性は同順で10.8,7.6であった.また,P+U例における傾斜方向性はSVV,SPVの順に-5.0°,0.3°であり,動揺性は7.4,3.6であった.<BR>【考察】<BR>P例におけるSVVとSPVは共に傾斜方向性は小さいが動揺性は大きい傾向にあった.Pusher現象の責任病巣は視床後外側部や島後部,中心後回であるのに対し,今回のP例の主病巣は前頭側頭葉であり,病巣の違いが傾斜の少ない要因と考えられた.すなわち,今回のP例におけるPusher現象は,運動麻痺や体幹筋緊張の不均衡に起因したものと思われた.一方,P+U例ではSPVに比べSVVは大きく麻痺側に傾斜し,かつ動揺性も大きかったことから,USNが視覚的な垂直軸認知をより偏倚させPusher現象に影響することが示唆された.<BR>【まとめ】<BR>P例とP+U例の垂直軸認知の測定から,Pusher症例におけるUSNの合併がSVVをより偏倚させる可能性が示唆された.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680502715904
  • NII論文ID
    130005451420
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_174
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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