Pusher現象の重症度に影響する因子の検討―垂直軸の偏倚量と動揺性―

DOI
  • 藤野 雄次
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 網本 和
    首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
  • 井上 真秀
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 播本 真美子
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 大塚 由華利
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 細谷 学史
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 篠崎 かおり
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター
  • 高石 真二郎
    埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーションセンター

抄録

【はじめに】<BR>脳血管障害患者において,半側空間無視(USN)やPusher現象は垂直軸認知の障害をもたらす.この垂直軸認知障害の特徴として,USN例では主観的な視覚的垂直認知(SVV)の動揺性を示す標準偏差値が大きくなることが示されている.一方,Pusher現象例ではSVVや身体的垂直認知(SPV)などの偏倚,すなわち垂直定位の方向性を示す偏倚量平均値(恒常誤差)が重要視されている.しかし,USNを合併したPusher現象例において,垂直軸認知に対する偏倚量や動揺性の影響は十分明らかではない.本研究の目的は,USNを合併したPusher現象例の重症度と,垂直軸認知の偏倚量および動揺性との関連について検証することである.<BR>【方法】<BR>対象はUSNとPusher現象を呈する左片麻痺患者15例(年齢68.0±7.2歳,全例右手利き,BIT通常検査49.4±18.3点,測定病日23.1±9.2日)とした.対象者は,体幹の後側面を囲い,台座上に角度計,台座下に前額面上で台座を回転させる半円状のレールを取り付けた傾斜測定器に足部非接地で腰掛けさせた.測定方法は,検者が座面を20度傾斜させた位置(開始位置)から2°/秒の速さで水平方向に座面を動かし,対象者が垂直と認知した位置での座面の傾斜角度を記録した.SVVは開眼条件,SPVは閉眼条件とし,開始位置を非麻痺側・麻痺側・麻痺側・非麻痺側の順で計4回測定した.角度は鉛直位を0°,非麻痺側への偏倚をプラス・麻痺側への偏倚をマイナスとし,4回の平均値を偏倚量平均値,標準偏差値を動揺性として算出した.Pusher現象はScale for Contraversive Pushing(SCP)を用いて評価し,SCPとSVV・SPVそれぞれの偏倚量平均値,動揺性との関連性をピアソンの積率相関係数を用いて検討した.なお,対象者には事前に本研究内容を十分説明し,書面にて同意を得た.<BR>【結果】<BR>SVVの偏倚量平均値は-2.3°,動揺性は7.9,SPVの偏倚量平均値は0.7°,動揺性は5.9であった.SCPは4.63±1.36点であり,SVVの動揺性にのみ有意な中等度の相関を認めた(p<0.05).<BR>【考察】<BR>これまで,Pusher現象の生起メカニズムとして,SVVやSPVの偏倚量や偏倚の方向性について議論されてきたが,本研究からUSNを合併するPusher現象例では,垂直定位の動揺性がPusher現象の重症度と関連することが示された.以上から,USNは視覚情報による垂直定位の認知に影響をおよぼし,Pusher現象の症候を修飾することが示唆された.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680502717568
  • NII論文ID
    130005451422
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_173
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ