人工膝関節全置換術患者の30秒椅子立ち上がりテストの変化とその関連要因
説明
【目的】<BR>高齢者の下肢筋力を簡便に評価する方法として、30秒間に何回椅子から立ち上がりが可能かを評価する30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)が行われている。これらの動作は加齢による筋力低下や膝痛を有する場合にその能力が低下することが予測される。人工膝関節全置換術(TKA)患者のアウトカム指標の一つとしても有用と考えられる。本研究はTKA患者のCS-30の経時的変化と各測定時期における身体機能や痛みとの関連について検討した。<BR>【方法】<BR>対象は2010年2月から2011年11月までに当院でTKAを施行した変形性膝関節症患者33例39膝とした。手術時年齢は73.0±6.5歳、BMI26.3±3.5 kg/m2、術後在院日数26.5±5.9日、術後リハは当院プロトコールに準じて退院後も術後3ヶ月間外来リハを実施した。CS-30は中谷らの方法に準じて行った。膝伸展筋力はBiodex System3を使い、isokinetic 60 deg/secで最大筋力を体重で除して算出した。バランス能力は開眼片脚起立時間、動的バランス能力はTimed Up and Go test(TUG)を測定した。痛みと機能は準WOMACの各尺度を用いた。各評価は術前、術後1ヶ月(退院時)および3ヶ月(外来通院時)に行った。統計解析はCS-30の変化を一元配置分散分析とBonferroni多重比較、CS-30と各要因との関連性に関してはpearsonの相関係数を用いて解析を行い、有意水準は5%未満とした。本研究は、倫理的配慮として対象者に研究内容の説明文書を用いて説明を行い、研究参加への同意を得た。本研究は当院の生命倫理委員会の承認 (0826) を受けて実施した。<BR>【結果】<BR>CS-30は12.4±3.7→13.0±3.5→14.3±4.3回と変化した。術前と比較して術後1ヶ月で有意な変化はなく、3ケ月で有意に改善を示した(p<0.01)。術後1ヶ月と3ヶ月での比較では有意に改善が見られた(p<0.01)。CS-30の術前では術側及び非術側膝伸展筋力、TUG、術側及び非術側の痛み、機能と有意な相関が認められた。術後1ヶ月では非術側膝伸展筋力、TUG、術側及び非術側開眼片脚起立時間と有意な相関が見られた。術後3ヶ月では術側及び非術側膝伸展筋力、TUG、術側及び非術側開眼片脚起立時間、非術側の痛み、機能と有意な相関を示した。<BR>【考察】<BR>TKA患者におけるCS-30は術後3ヶ月で改善が認められた。CS-30の成績は術側だけでなく非術側の筋力や痛みなどの影響を受けやすいことが示唆された。TKA患者にとってCS-30は下肢筋力の指標だけでなく、パフォーマンステストとしても応用可能で痛みや機能も反映する有用な指標と考えられる。
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 31 (0), 196-, 2012
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680502846464
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- NII論文ID
- 130005451522
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可