左THA術後に股関節内転筋に疼痛を生じた症例に対する治療経験―相反抑制作用を利用したアプローチ―
Description
【目的】<BR>人工股関節全置換術(以下THA)は変形性股関節症(以下OA)による疼痛や歩行能力、ADL低下の改善を目的に施行される。しかし、THA後、関節構築学的に変形は改善しているにも関わらず、臨床上、股関節周囲筋部に疼痛を訴える症例が多く報告されている。THA後の股関節周囲筋部の疼痛と歩行能力は強く影響するとの報告もあり、股関節周囲筋部の疼痛に関して、股関節外転筋部の疼痛と歩行能力に関する報告は多くされている。しかし、股関節内転筋の疼痛と歩行能力に関する報告は少ない。今回、左THA後5週より患側股関節内転筋部に疼痛を生じた症例を経験した。その症例に対して、相反抑制作用を用いた訓練を施行したところ、疼痛軽減とそれに伴う歩行能力の改善が得られたので報告する。<BR>【方法】<BR>症例は左OAにて左THAを施行した79歳女性。左THA後5週より左股関節内転筋部の圧痛、運動時痛が出現。筋緊張は左長内転筋、大内転筋にて亢進。筋力は左股関節伸展筋、外転筋MMT 3、可動域は左股関節屈曲90°、伸展5°であった。歩行は左立脚期において体幹が常に右側屈位になっており、左下肢への荷重が不十分であった。また、左MS~TOでは左股関節伸展に伴う蹴り出しが認められず、体幹の前傾が強くなった。本症例に対して、患側股関節外転の等尺性運動による相反抑制作用を用いた。なお、本研究は目的、主旨を十分に説明し同意を得て行った。<BR>【結果】<BR>左THA後7週において、左内転筋部の圧痛、運動時痛が軽減し、左立脚期での左下肢への荷重量向上、左MS~TOにかけての左股関節伸展に伴う蹴り出しが認められた。<BR>【考察】<BR>本症例は左THA後5週より歩行時に左股関節内転筋部に疼痛が認められた。この原因として左MS~TOでの左股関節伸展制限が挙げられる。正常歩行ではHC~MSでの大殿筋の筋収縮により、MS~TOにかけて股関節伸展に伴う蹴り出しを行う。しかし、本症例は大殿筋を切開しており、筋出力が低下している。その為、左MS~TOでの股関節伸展が認められず、左股関節が屈曲位にあることで左股関節には屈曲モーメントが生じる。そこで、左MS~TOにかけて股関節伸展作用のある大内転筋、長内転筋を収縮させることで、股関節伸展を補償したと考えられる。その結果、左股関節内転筋の筋緊張が亢進し、疼痛が生じたと考察した。そこで、左股関節内転筋の筋緊張亢進に伴う疼痛に対して、筋緊張を抑制する効果が最も高いとの報告が得られている相反抑制作用を利用することで内転筋群の筋緊張軽減、疼痛軽減を図った。<BR>【まとめ】<BR>左股関節内転筋部に疼痛出現後、相反抑制作用を用いたことで、左THA後7週より左内転筋部の圧痛、運動時痛が軽減し、歩容も改善した。
Journal
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 31 (0), 123-, 2012
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680502906880
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- NII Article ID
- 130005451349
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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