立位における前額面上のCOPの偏位と歩き始めの振り出し側との関係
抄録
【目的】<BR> 通常、歩き始めの際、右足から、又は左足から振り出しやすい人がいるように立位姿勢はその後に起こる個々の歩行動態を反映していると思われる。つまり立位姿勢は左右対称的ではなく歩行を前提とした機能的な立位姿勢があると予測される。しかし立位姿勢と歩行の直接的な関係を示す研究は少なく、臨床においてはどのような立位姿勢を求めるべきか結論が出ていない。そこで本研究は立位における前額面上のCOP(床反力作用点)の偏位と歩き始めの振り出し側との関係を明らかにすることを目的とした。<BR> 【方法】<BR> 被検者は本研究の主旨に同意の得られた健常成人70例(男性15例、女性55例)。平均年齢は31±8歳であった。重心動揺計グラビコーダーGS-30(アニマ社製)を用い、自然立位(左右の足底幅を任意に開き、重心動揺計の中心軸に対し左右等間隔に足底を置いた状態)での前額面上のCOPの偏位を測定した。又自然立位から歩き始めを観察し、左右どちらの足から振り出したかを記録、実施回数は10回とした。これらを二項検定により有意水準5%として統計学的に有意と認められる9回以上同じ足から振り出した被検者を右足群または左足群と定義した。また8回以下の場合は対象外とした。さらに右足群と左足群それぞれの各群における前額面上のCOPの偏位をカイ2乗適合度検定を用い有意水準5%にて検定した。尚本研究はヘルシンキ条約に基づく当院倫理規定に準じ調査した。<BR> 【結果】<BR> 被検者70例の内、右足群は36例(51%)であり、左足群は22例(31%)、対象外例は12例(17%)であった。右足群36例の内、29例のCOPが左偏位し、7例のCOPが右偏位しており、右足群ではCOPの左偏位が有意であった(p<0.01)。又左足群22例の内、15例のCOPが右偏位し、7例のCOPが左偏位しており、左足群ではCOPの右偏位が有意であった(p<0.05)。<BR> 【考察】<BR> 立位における前額面上のCOPは右足群、左足群ともに振り出し側の反対側(以下軸足側)に偏位している傾向がみられた。歩き始めでは、COPは一旦振り出し側方向へ移動することによりCOG(身体重心点)を軸足側へ移動させ下肢を振り出す。今回の研究では、COGをより軸足側へ移動させやすくするために立位時に予めCOPを軸足側へ偏位させていることが示唆された。これは歩行動態を前提とした機能的な立位姿勢を追及する一助となると考える。
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 30 (0), 184-184, 2011
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680503806464
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- NII論文ID
- 130006950300
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可