水平面における胸郭の捻じれと体幹回旋運動の関連性について
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説明
【目的】<BR> 臨床において,胸郭アライメントと体幹の運動機能の共通点を多く観察する.体幹の運動は,胸郭アライメントを変化させることにより成立する運動であり,相互に関与することが十分に考えられる.その中で,胸郭の水平面上の捻じれに着目し,体幹回旋運動との関連性について検討を行ったので,ここに報告する.<BR> 【方法】<BR> 対象は健常成人男性11名(年齢21.9±1.3歳,身長172.0±6.4cm,体重66.0±7.5kg)とした.慢性呼吸器疾患,開胸開腹術の既往があるもの,脊柱および胸郭に著明な変形があるものは対象者から除外した. 計測を行うにあたり,各対象者に対して本研究の趣旨を十分に説明し,書面で承諾を得た. まず,胸郭の捻じれについての評価を行った.対象者を腹臥位としTh2,Th5,Th7,Th10レベルに傾斜角度計を体軸に対して直角に置いた.各レベルの傾斜の平均値をもって左側高位を左捻じれ群、右側高位を右捻じれ群と定義した.次に椅子座位にて,体幹回旋運動の計測を行った.計測には3次元動作解析装置(VICON MX)を用いた.赤外線反射マーカーは左右の第2,10肋骨角とPSISの6点に貼付した.体幹回旋運動は,両側の最大回旋を指示し,上肢を腕組した状態で,能動的に行った.計測の後,左右の第2,10肋骨角,PSISをそれぞれ結んだ線の水平面上での最大回旋角度を算出し,胸郭の捻じれと比較した.<BR> 【結果】<BR> 腹臥位での平均傾斜角度はTh2レベルで1.4±4.0°,Th5で2.7±3.8°,Th7で2.0±4.0°,Th10で1.5±3.8°であった.各対象者では11名中7名が左捻じれ群,4名が右捻じれ群であった.また,胸郭が捻じれている方向と,同側への体幹回旋可動域(T2-PSIS)が大きい者が9/11名であった.同様に,胸郭回旋(T2-T10)では6/11名,腰部回旋(T10-PSIS)では5/11名が,胸郭の捻れている方向と回旋の優位側が一致していた.<BR> 【考察・まとめ】<BR> 今回の結果から腹臥位での胸郭高位側と同側に体幹回旋しやすい傾向があった.カパンジーは胸椎の軸回旋が起こる際,肋骨の弯曲が変化することを報告している.例えば右回旋の際,水平面において,右肋骨角と左肋軟骨弯曲増強,左肋骨角と右肋軟骨部の弯曲減少が起こるとされている.すなわち,回旋側と同側の肋骨角が膨隆してくることとなり,胸郭は回旋方向と同側に捻じれる.よって,今回の体幹回旋運動の結果と一致する.胸郭回旋と腰部回旋では,同様の傾向は見られなかった.これは,腹部,腰部の筋が胸郭に付着しているため,胸郭,腰部の回旋に影響するためと考える.運動療法による胸郭アライメントの変化が可能であれば,体幹運動にも変化が可能であることが示唆された.胸郭の捻じれ,アライメントと体幹運動は相互に関連し合っている可能性があると考える.
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 30 (0), 200-200, 2011
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680503878016
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- NII論文ID
- 130006950362
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可