くも膜下出血により遷延性意識障害を呈した症例
書誌事項
- タイトル別名
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- 意識レベルの推移とご家族との関わり
抄録
【はじめに】今回,くも膜下出血により遷延性意識障害を呈した症例を担当する機会を得た.3ヶ月の理学療法介入で,意識レベルに大きな変化は得られなかったが,症例と家族の関係性に変化がみられたので以下に報告する. 【症例】60歳代,女性.キーパーソン:夫,家族の面会頻度:ほぼ毎日,平均5時間 【経過】平成21年4月自宅にて意識障害出現,近医にてくも膜下出血と診断される.7月当院入院,筆者は9月より担当となる.初期評価:東北療護センター遷延性意識障害度スコア表(以下広南スコア)67点(最重症例),Modified Ashworth Scale(以下MAS)0.介入当初は可動域訓練,感覚刺激入力,車椅子乗車実施.また症例の身体状況を報告,ストレッチも指導.家族の希望は「見舞いに来た人が誰だか分かるようになって欲しい」.2~4週では家族より「ぱっと目を覚ましてくれないかな」,「前の病院では意識が戻る可能性はほとんどないと言われたけど,何だか変わるような気がする」,「仕事している時は迷惑ばかりかけて,その恩返しが出来ない」などの話あり.4週まで家族の症例に対する想いが強く,症例からの情報を受け取ることが困難であったため,関係性は家族から症例に対する一方向であった.5週家族より「今日はお風呂に入れた.良かった」との話あり.6週広南スコア65点,MAS1.7週「関節が固くなってきた」と家族より話があった.この頃,家族より症例に対し日々の変化に気付き始める.家族が症例の変化を受け取り始め,関係性は徐々に双方向となる.9週より起立台開始.家族より「関節が固くならないようにリハビリをやって欲しい」との発言.10週MAS2,広南スコア65点.家族より「表情が少し変わってきた」「ストレッチすると体が柔らかくなる」との話あり.10週以降はより変化に気付くようになり,関係性はさらに双方向へ変化した. 【考察】今回,症例と家族の関係が双方向へと徐々に変化がみられ,症例の変化を家族が感じることが可能になってきた.そのため,家族の寂しさや無力感が解放されてきたと考える.これは,今回10週間の理学療法介入で適宜家族へ症例の身体状況の報告,役割分担を行うことにより,症例と家族の間の橋渡しの様な存在となり、図らずもその関係性に変化を与えることが出来たと考える.症例の変化を家族が感じることで,家族の心理的負担の軽減,身体状況に対する理解に繋がり,このような症例と家族の関係性の変化が今後,症例と生活していく中で家族への喜びとなり得ると考える. 意識障害に対し,身体機能の改善や意識レベルの改善だけでなく,症例と家族の関係性にも着目し,理学療法介入することで症例と家族のQOL向上に繋がると考える.
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 29 (0), 170-170, 2010
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680503964416
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- NII論文ID
- 130006950379
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可