膝蓋骨再骨折症例の理学療法

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  • ~膝関節屈曲可動域獲得の限界について~

抄録

【はじめに】  症例は、膝蓋骨骨折術後の理学療法を施行し、職場復帰後間もない時期に同部位の膝蓋骨再骨折を呈した。再手術後の膝関節屈曲可動域の獲得は、最終的に90°であり可動域制限が残存した。今回、膝蓋骨再骨折後の経過と実施した理学療法について、膝関節屈曲可動域獲得の限界を含めて報告する。 【症例紹介】  年齢性別は、30歳台の女性である。既往歴は、骨形成不全症があり5年前より投薬治療中で経過は良好である。 【経過および理学的所見】  1回目の右膝蓋骨骨折は、横骨折(3part)で仕事中に段差を踏み外し受傷した。4日後他院にて手術(Zuggurtung法)を施行し、術後28日目より当院外来にて理学療法を開始した。術後83日目より職場復帰し、術後100日目に屈曲130°を獲得したことから理学療法終了の予定であった。2回目となった膝蓋骨再骨折は、粉砕骨折で術後107日目に仕事中の転倒で受傷した。 2回目の受傷から10日後に、他院にて再手術(Zuggurtung法・circulate wiring)を施行した。再手術後18日目より当院外来にて理学療法を再開し、膝関節屈曲可動域は20°であった。再手術後の屈曲可動域は、30日目40°、60日目45°、90日目60°、120日目80°、150日目85°、180日目90°、210日目授動術施行となった。 【理学療法内容】  理学療法は、1)膝関節周囲軟部組織の徒手的ストレッチング、2)膝関節屈曲・伸展自動運動および抵抗運動、3)屈曲・伸展持続伸張、4)立ち上がり、5)歩行訓練、6)エアロバイクを中心に時期に応じた内容を選択するとともに、獲得可動域に応じた肢位の変更や各種治療に対する回数、負荷量、時間を設定しながら実施した。 【結果・考察】  再手術後の膝関節屈曲可動域は、4ヶ月以降で大きな変化が得られにくくなり、6ヶ月までの2ヶ月間に得られた屈曲可動域は80°から90°で、10°の改善であった。さらに6ヶ月以降でその可動域は停滞し、90°からの変化はみられなかった。そのため7ヶ月後授動術に至った。  膝蓋骨再骨折後の屈曲可動域の獲得は、再骨折および粉砕骨折に伴う骨折部離開防止から積極的な屈曲可動域訓練は困難であった。さらに、初回骨折の回復途中に伴う膝関節機能低下の残存、同部位の再受傷、長期経過が加わり、軟部組織の線維化、短縮、癒着、拘縮を予防することは難しかったと考えられた。授動術として対象となる組織に対して重点的に理学療法を継続した結果、6ヶ月の期間で90°の屈曲可動域獲得が限界であった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680504314880
  • NII論文ID
    130006950459
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.29.0.34.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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