歩行可能な脳性麻痺児・者における股関節筋解離術と尖足変化の関係

DOI
  • 楠本 泰士
    南多摩整形外科病院リハビリテーション科
  • 新田 収
    首都大学東京健康福祉学部理学療法学科

抄録

【目的】<BR>歩行可能な脳性麻痺児・者は足部の尖足のみが問題点と思える者でも股・膝関節の筋に痙性を認める。歩行可能な脳性麻痺児・者に対する股関節解離術後に尖足の軽減する症例を多く経験する。股関節の手術で足部アライメントが変化するならば、下肢手術は関節別に分けるべきであり、足部の各筋の延長量は慎重に決めなければならない。そこで本研究の目的は歩行可能な脳性麻痺児・者において股関節筋解離術後の尖足変化における特徴を明らかにすることとした。<BR> <BR> 【方法】<BR>対象は2008年4月から2010年10月の間に当院で両股関節筋解離術を施行した全152例中、手術の既往がなく初回の手術が股関節であり数歩でも裸足独歩の可能だった12名・24肢(男性5例、女性7例、平均年齢11.0[4-32]歳)とした。術前のビデオより対象を(1)Initial Contact(IC)が足尖で常に踵を浮かせ歩行する者・(2)ICが足尖で瞬間的に踵がつく者・(3)ICが足底全接地の者・(4)ICが踵接地可能でToe offが観察される者の4群に分類し、術後のビデオより4つの分類にて踵の接地が改善した群(軽減群)と、変化のなかった群(非軽減群)の2群に分類した。2群にて術前他動関節可動域の下肢伸展挙上角(SLR)・膝窩角(PoA)・膝関節伸展角・膝関節伸展位での足関節背屈角(DKE)・膝関節屈曲位での足関節背屈角(DKF)・DKF とDKEの差の値の6項目をShapiro-Wilk検定にて正規性の検討後、Mann-WhitneyのU検定を用いて検討した。有意水準は5%とし、統計ソフトにはSPSS ver.16を用いた。全例で同意を得てリハビリテーションを実施し、倫理的配慮に基づきデータを取り扱った。<BR> <BR> 【結果】<BR>軽減群と非変化群はそれぞれ12肢となり、軽減群が非軽減群と比べ有意にDKF とDKEの差の値は大きく、SLRの角度が小さかった(p<.05)。 【考察】軽減群のDKF とDKEの差の値が大きかったことより腓腹筋の可動性が保たれていることが股関節筋解離術後の尖足歩行軽減に関与する要因と考えられる。股関節筋解離術後に踵が着きやすくなった理由として、股関節屈筋の解離により体幹・骨盤の前傾を伴うかがみ肢位が改善し体幹を垂直に起こしやすくなり、結果立位・歩行時の重心が後方に移動したと考えられる。軽減群のSLRの角度が小さかったことから歩行時の遊脚の改善から動的尖足の改善の可能性があるが詳細は不明である。今後は歩行における3次元動作解析装置を使用した検討が必要と思われる。<BR> <BR> 【まとめ】<BR>本研究は脳性麻痺児・者に対する下肢整形外科手術の選択における一助となりうる。手術筋や延長量の慎重な検討が求められる。足関節の可動性を保っておくことが股関節術後の動的尖足の改善に影響すると考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680504845952
  • NII論文ID
    130006950754
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.86.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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