グローインペイン症候群に罹患した成長期サッカー選手の状態と予防トレーニングの効果について
説明
【目的】<BR>我々は2009年2月よりJリーグ下部組織(ジュニアユース)のメディカルサポートに携わる機会を得た。その中で、2009年にグローインペイン症候群(以下、GPS)の症例が多く見受けられたため、2010年はチーム全体としてストレッチやバランス練習の予防指導を行った。今回GPSの罹患要因や復帰期間など後方視的に調査し、予防指導効果を検証した。<BR>【対象】<BR>GPSと診断された症例は、2009年は53名中9名(17%)12股で年齢14.1±0.7歳、2010年は50名中6名(12%)8股で年齢14.0±0.9歳であった。また調査にあたりチームや選手に本研究の主旨を十分に説明し同意を得た。<BR>介入頻度は週に1回で、物理療法、運動強度の調節、ストレッチ、筋力訓練、振り子運動などを行った。2010年はチーム全体にストレッチやバランス訓練の指導を行った。<BR>【評価および分析】<BR>病態把握は、1)疼痛部位、2)障害側、3)股関節柔軟性(股伸展・外旋・開排・鳶座、体前屈)、4)片脚バランス能力(片脚スクワットと片脚爪先立ち)の4項目とした。障害側の傾向はχ2乗検定で調査した。介入効果の検証は、2009年と2010年の5)罹患率と6)復帰期間を対応のないt検定を用いて比較した。有意水準は5%とした。<BR>【結果】<BR>2009年は、1)恥骨結合1股、内転筋付着部付近7股、大腿直筋付着部付近4股、2)利き足9股、非利き足1股、両側2股、3)股伸展12股、外旋5股、開排5股、鳶座6股、体前屈8股、4)全例が両側共にできなかった。2010年は、1)内転筋付着部付近5股、大腿直筋付着部付近3股、2)利き足6股、非利き足2股、3)股伸展8股、外旋2股、開排2股、鳶座3股・体前屈3股、4)全例が両側共にできなかった。障害側は利き足に多くみられたが有意差はなかった。予防トレーニング効果について、5)2009年17%、2010年12%であり、6)2009年15.2±10.7週(8週~40週)、2010年7.3±3.0週(4週~14週)であったが有意差はなかった。<BR>【考察】<BR>GPSは、頻回なキック動作を繰り返すサッカー選手に多く、復帰までに期間を要するスポーツ障害である。罹患側は利き足に多く、今回全例で股関節伸展の柔軟性や片脚バランス能力の低下がみられたため、2つの項目がGPS罹患率を高める要因と考える。そして、2010年からはこの2項目の改善とチーム全体にストレッチなどの指導の強化を行った。そのため、統計学的な差はみられなかったものの、復帰の早期化や症状悪化の回避に良い印象を持っている。さらに、現場ではGPSを発症してから治療までの期間が短いほど復帰が早く、症状を抱えてのプレーの継続は復帰遅延を招くと考える。GPSの治療には病態に対するチームと本人の理解を得て、早期発見、早期治療が極めて重要だと考える。
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 31 (0), 88-, 2012
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680504853632
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- NII論文ID
- 130005451673
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可