廃用性筋萎縮に対する荷重運動の効果

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抄録

【目的】<BR>寝たきりや外傷などで,身体活動が低下すると筋に対する力学的刺激が減少し,筋萎縮が引き起こされる.本研究は、荷重除去中における荷重運動を行った場合に、筋萎縮の進行を防止できるかどうか、運動の効果を明らかにすることを目的とした。<BR> 【方法】<BR>Wistar系雄性ラット(10週齢)18匹を使用した。(1)後肢懸垂群、(2)後肢懸垂の過程で毎日15分間荷重負荷を与えた荷重群、(3)自由に飼育した対照群とした。荷重除去の方法は、Moreyの変法を用い、実験期間は2週間とした。後肢の活動は荷重以外制限せず、関節運動を自由に行わせた。実験終了後、ヒラメ筋を摘出し筋の中央部をコルク片上に垂直に立て、ヘキサン・イソペンタンで急速凍結した。クリオスタットにて、10μmの横断切片を作成し、hematoxylin-eosin染色(以下HE染色)、コハク酸脱水水素酵素染色(以下SDH染色)を行った。光学顕微鏡と顕微鏡デジタルカメラにて撮影後と画像解析ソフトWinROOF Professional(三谷商事製)を用いて、筋線維横断面積100本の平均値を測定した。各群における筋線維横断面積の比較は、一元配置分散分析と,Scheffe法による多重比較を行い、有意水準は5%未満とした。本実験は大学付属動物実験倫理委員会の承認を得て実施した。<BR> 【結果】<BR> HE染色において,懸垂群では,筋線維間の間隙の増大,筋線維の萎縮と円形化とが観察された.中心核線維などの異常所見は観察されなかった。また、荷重群では,筋萎縮所見を認めなかったが、筋核の染色性が低下していた。平均筋線維横断面積の比較では、対照群と比較して懸垂群は有意に萎縮していたが、荷重群は対照群と比較して有意な差を認めかなった(P<0.01)。<BR> 【考察】<BR> 組織学的所見では、荷重除去により筋線維の萎縮や間隙の広がりが観察された。これは結合組織や脂肪成分の増加や、筋細胞含有水分量が減少し、筋線維間の拡大が生じたと考えられる。 平均筋線維横断面積の比較を行った結果から、後肢懸垂による下肢の荷重除去中で、荷重運動を行う事により、筋への力学的刺激が加わり、収縮タンパク質の合成と分解のバランスが保たれ,筋原線維面積が維持されたとのではないかと推察された。この結果から荷重運動により筋萎縮が防止できる可能性が示唆された。荷重除去中であっても、荷重運動を行うことにより、姿勢調節に関与する筋が多く存在するタイプI線維の萎縮を防止できる事は臨床応用にも重要であると考えられる。 今後の課題としては、本研究でも用いた運度負荷量、頻度や週齢について検討を行い、さらに運動の影響を検討する必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505257600
  • NII論文ID
    130006950799
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.30.0.270.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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