車いす座面シートのたわみが座位姿勢と座位安定感に与える影響~第1報~

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抄録

【目的】<BR>筆者が第46回日本理学療法学術大会で発表した先行研究において、車いす座面シートのたわみにより駆動速度が低下する事が示唆された。その中の考察において、車いす座面シートのたわみにより座位姿勢の不良と安定性の低下が生じることで駆動速度が低下すると考えた。そこで本研究ではたわみによる車いす座位姿勢と座位安定感への影響を調査する事を目的とした。<BR>【方法】<BR>健常成人6名(平均年齢36.2±11.3歳、男性4名29.3±4.5歳、女性2名50.0±2.8歳)とし、被験者本人に対し本研究の目的と内容を説明し同意を得たのち実施した。 同じ普通型車いすを使用し、同一検者で測定を実施した。まず「背もたれに寄りかからないように浅く座って下さい」と指示し、車いすに座ってもらった。この際に座面シートのたわみ有りの車いすもしくは座面シートのたわみ無しの車いすのどちらから座ってもらうかは、被験者毎に変更した。次に前額面と矢状面から写真撮影した。その後、座位の安定感をVASを用いて評価した。VASに関しては、安定を0、不安定を10とした。次に車いすのたわみの有無を変更し同様の流れで測定した。座位姿勢の比較は写真からの視覚的な主観的評価を行った。座位安定感のVASで得られた数値の比較はWilcoxon順位和検定にて行った。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR> 車いす座位姿勢については、たわみ有り車いすでは骨盤後傾と体幹の屈曲傾向がみられ、たわみ無し車いすではそれが軽減する傾向がみられた。座位安定感についてはたわみ有りのVASの平均値は6.0、たわみ無しのVASは3.7であり、有意差はみられなかった。<BR>【考察】<BR> 木之瀬は、スリングシートのたわみが骨盤後傾の要因の一つであると述べ、骨盤の不安定性につながるとしている事から、車いす座面シートのたわみにより座位姿勢の悪化や座位安定感の低下が起こることが予想される。本研究では、座位姿勢はたわみ有り車いすにて骨盤後傾と体幹の屈曲傾向がみられた。この結果は客観性には乏しいが、上記の文献と一致していた。また座位安定感は統計的には有意差がみられなかったが、たわみ有り車いすで低い傾向がみられ、やはり上記の文献と一致していた。本研究では車いす座面シートのたわみが座位姿勢と座位安定感に与える悪影響について客観的には証明できなかったが、その可能性については示唆できたと考える。<BR>【まとめ】<BR>この研究により、車いす座面シートのたわみにより座位姿勢の不良と安定性の低下が生じ、駆動速度が低下するという仮説が進展できたと考える。今後は本研究を客観的に行う事が重要と考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505327488
  • NII論文ID
    130005451448
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_266
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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