健常成人およびTHR患者の起立・着座動作の最適運動パターン

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抄録

【目的】<BR>本研究の目的は,健常成人の起立動作(以下「STS」)および着座動作(以下「BTS」)における運動パターンを関節運動の滑らかさ最適軌道として特徴づけることである.更にその最適軌道を参照にして運動器疾患の患者のSTSの回復過程についてケーススタディーを通して分析することである.<BR>【方法】<BR>研究内容の説明を充分に受けて同意した健常成人男性5名(平均年齢20.2±0.74)と,右人工骨頭置換術後の女性1名(80歳代,以下「THR患者」)である.健常成人の運動課題は,椅子座位から行うSTSと,座位姿勢に戻るBTSを異なる速度(任意,速く・普通・遅く)で5回ずつ行うことである.運動中の肩・大転子・膝関節・外果に貼付した赤外線反射マーカーの位置を3次元動作解析装置(ViconMX,100Hz)により記録し,各関節の角度と重心位置を求め,重心運動から運動時間を求めた.THR患者にも同様の動作課題を行わせ,動作中の矢状面内における肩・大転子・膝・外果の位置をデジタルカメラ(CASIO EXILIM EX-F1,30Hz)を用いて記録し,画像解析ソフト(ImageJ)を用いて各関節の角度変化を求めた.STSとBTSそれぞれについて,運動開始と終了時の股・膝・足関節角度を境界条件とする関節運動滑らかさ最適軌道(角度スナップ最小,以下「MAS軌道」)を表計算ソフト(Microsoft Excel)で計算し,実測軌道と比較した.本研究は昭和大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号132,162).<BR>【結果】<BR>健常成人のSTSとBTSでは,速度条件によらず動作中のある一定の時期に股関節最大屈曲を示した.両動作とも,この股関節最大屈曲が生じるタイミングは運動時間から高い確率で予測できた.STSでは運動時間の37.1%(R2=0.89),BTSは51.8%(R2=0.90)の時点であった.また,股・膝関節の角度変化は特定の組み合わせを示し,これらの特徴はMAS軌道から予測できた.一方,THR患者では,1か月間の回復過程に伴って,股・膝関節の協調性が上記MAS軌道に近づくことが定性的に明らかになった.<BR>【考察】<BR>健常成人男性のSTSとBTSでは,股関節の運動が切り替わるタイミングが運動時間に拘束され,パターン化されていた.また,股・膝関節の協調性は特徴的で,特定の境界条件におけるMAS軌道の性質と一致し,関節運動の滑らかさが最大となる運動パターンと考えられた.すなわち運動器疾患の動作分析および回復過程を把握する基準となる可能性が示された.<BR>【まとめ】<BR>STSとBTSには関節運動の滑らかさが最大になるような運動パターンがある.この最適な運動パターンに近づくように運動器疾患患者の動作が回復している可能性がある.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505353472
  • NII論文ID
    130005451479
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_249
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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