僧帽筋上部線維の筋疲労に対するストレッチ効果の検証

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抄録

【目的】肩こりに対する運動療法の一つに患部のストレッチ療法がある.肩こりをもたらす代表的な筋の一つである僧帽筋上部線維のストレッチは,臨床でよく用いられるがその効果について客観的に検証した報告は少ない.本研究の目的は,表面筋電図を用い筋疲労の観点からストレッチ効果を検証することである.  【方法】対象は本研究に同意を得た健常人18名(男性12名,女性6名,平均年齢25.2歳)とし,無作為に介入群(男性7名,女性3名,平均年齢25.0歳)と対照群(男性5名,女性3名,平均年齢25.5歳)に振り分けた.介入群に対してはアクティブIDストレッチングに準じて僧帽筋上部内側線維,外側線維へのストレッチを実施した.ストレッチ時間は15秒間各2セットとし検者の指示のもとに行なった.対照群においては同時間安静座位をとらせた.筋疲労の測定にはNoraxon社製表面筋電図Myosystem1400および日本MEDIX社製Hand-Held-Dynamometorを使用した.測定課題は右肩甲骨挙上等尺性収縮(最大筋力比50%)とし検者の口頭指示にて運動を1分間継続した.測定肢位は椅子座位とし,床から垂直に固定した自家製固定用ベルトで右肩峰を固定した.筋電図の導出筋は右僧帽筋上部線維とし,十分な皮膚処理を実施した後,双極誘導にて電極を貼付した.解析方法は周波数解析を用い,測定課題中の中央周波数を算出した.運動開始直後10秒間と運動終了直前10秒間の中央周波数からそれらの減少率を算出した.統計学的処理は対応のあるt検定を用い介入前後の減少率を比較した.なお,有意水準は5%未満とした. 【結果】介入群では中央周波数の減少率が介入前で8.9%,介入後5.6%であり,介入後で減少率が有意に低値を示した.対照群では介入前7.0%,介入後8.0%で中央周波数の減少率に有意差はみられなかった. 【考察】過去の報告によると中央周波数の減少率が高いほど筋疲労の程度が大きいことを表す.したがって,介入後に減少率が低値を示したことで,ストレッチにより筋疲労の程度が小さくなることが示唆された.僧帽筋ストレッチは運動負荷に対する筋疲労を軽減させることが客観的に示された.

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  • CRID
    1390282680505366784
  • NII論文ID
    130006950874
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.28.0.24.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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