両側踵骨骨折後、疼痛が残存し歩行獲得に難渋した一症例

Description

【はじめに】多発外傷の理学療法において、複数の疼痛が動作を阻害するため疼痛の原因分析が困難となる。今回、踵骨骨折後整復不良にて荷重時痛が残存し、立位・歩行能力の再獲得に難渋した症例を担当した。左足関節内反矯正装具を右足関節外反矯正装具としてアライメント矯正に用いて、疼痛の歩行への影響を軽減できた。上記内容について報告する。<BR> 【症例紹介】30代男性、東北地方在住。診断名:両側踵骨骨折、左大腿骨頚部骨折、左坐骨骨折、第3腰椎圧迫骨折。現病歴:平成20年○月転落受傷後、救急搬送。受傷後8日左大腿骨頚部骨折へ観血的整復内固定術、両踵骨骨折へ保存療法(徒手的整復術)を施行。受傷後84日全荷重開始。受傷後195日自宅退院。<BR> 【理学療法評価】受傷後84日、両側外果・踵部、右足関節内側面に荷重時痛を認めた。立位保持では荷重時痛により上肢支持を要し監視レベルであった。両側にアーチサポートを使用したが、荷重時痛により両松葉杖歩行の実用性は低く、歩行の実施は訓練場面のみであった。<BR> 【疼痛の分析とアプローチ】踵骨骨折による踵骨圧潰を起因とし、踵骨高低下、踵骨の外側偏平治癒、距腿・距骨下関節の外反を生じていた。骨折部の疼痛に加え、足関節外反変形と内側縦アーチ低下による内側側副靭帯へのストレス、足関節外反変形による腓骨筋腱の狭窄による炎症症状が生じ、これらが荷重時痛の原因と考えられた。両側にアーチサポートを使用した後も右側の荷重時痛は残存していた。これは右足関節外反変形が問題と捉え、左足関節用内反矯正装具を外反矯正目的に右足関節に使用した。<BR> 【結果】受傷後84日、10m歩行は困難であった。その後、受傷後100日に装具使用を開始し、10m所要時間は5分、装具使用1カ月後に1.5分となり病棟内両松葉杖歩行を導入した。その後、受傷後195日に10m歩行所要時間は18秒となり、最大1kmの両松葉杖歩行が可能となり自宅退院となった。<BR> 【考察】本症例は、踵骨骨折による荷重時痛が強く持続していた。骨折による内側縦アーチ低下に対しアーチサポートを使用したが、右足関節の荷重時痛は残存した。これは右足関節の外反変形とそれに伴う腓骨筋腱の狭窄による炎症症状が生じているものと推察し、左足関節内反矯正装具を右足関節外反矯正目的として用いた。アライメント矯正は不十分ながらも疼痛の動作への影響を軽減することができ、実用的な歩行の獲得へ繋げることができた。本症例のような整復不良でアライメント矯正が困難な症例であっても、疼痛に関わる複数の要因を分析しアプローチすることが重要であることを再確認した。<BR>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505436160
  • NII Article ID
    130006950909
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.28.0.75.0
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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