大腿周径の測定における検者間の信頼性の検討

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抄録

【目的】<BR> 下肢周径の測定は客観的な指標として広く用いられている.臨床において他者との周径の測定値に差があることに疑問を持った.また先行研究において検者間の信頼性の報告は少なく,言及もされていない.そこで本研究では,大腿周径の測定において検者間の信頼性に影響する要因として,ランドマークの位置,巻尺を締める強さ,巻尺の傾きに着目し検証を行った.<BR>【方法】<BR> 検者は書面で承諾を得た当院の理学療法士28名(平均経験年数5.4±5.0年)とし,被験者は健常成人1名とした.検者は経験年数に偏りが出ないよう3群に分け,ランドマークの位置を固定した群(以下固定群),ランドマークの位置を固定した上で巻尺を締める強さを口頭で具体的に指示した群(以下強さ群),大腿部に対し垂直に一周線を引いた群(以下傾き群)とした.検者に普段行っている方法で背臥位になった被験者の右側膝蓋骨上縁10㎝の周径を測定させ,数日後に各群の設定した方法で同一部位を測定させた.測定器具は同一の巻尺を用いて3回ずつ測定し,測定値は1mm単位で読み取った.統計処理は,二元配置の分散分析を用いて級内相関係数ICC(2,1),及び標準誤差の算出を行った.信頼性については桑原らの基準に則って設定した方法前後で検証した.なお本研究は当院の倫理委員会の規定に基づき認証を得ている.<BR>【結果】<BR> ICC(2,1)は,固定群前0.88,後0.94,強さ群前0.89,後0.96,傾き群前0.85,後0.87であった.また標準誤差では,固定群前±0.11cm,後±0.09 cm,強さ群前±0.08 cm,後±0.06 cm,傾き群前±0.06 cm,後±0.09 cmであった.桑原らの基準では,全ての群の設定した方法前の信頼性は0.8以上であり良好であった.また固定群と強さ群においては設定後の信頼性は0.9以上であり優秀であった.<BR>【考察】<BR> 設定した方法前においても検者間の信頼性は良好であったため,設定した方法前後の検証で影響している要因を明らかにすることはできなかった.しかし優秀という結果から,ランドマークの位置の固定と巻尺の締める強さを提示することは,より信頼性を高める因子になると考えた.これはランドマークの位置の固定を行うことで,検者が視覚的に巻尺をあてる位置が明確となり,また締める強さは個人差が生じ易く,指示を加えることで強さの調整が行い易くなり信頼性が向上したと考えた.<BR>【まとめ】<BR> 今回,大腿周径の測定における検者間の信頼性に影響する要因を検証した.その結果,ランドマークの位置の固定と巻尺の締める強さを提示することが信頼性を高める要因であると考えられた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505486464
  • NII論文ID
    130005451570
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_298
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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